長らく日本人の3大死因といわれてきたのが「がん」「心臓病」「脳卒中」だが、近年そこに割って入ってきたのが「肺炎」だ。厚生労働省が9月8日に公表した2015年の人口動態統計(確定数)によれば、肺炎は日本人の死因の第3位に入っている。年間約12万人が亡くなり、死亡総数の9.4%にあたる。
肺炎は、昭和初期まで日本人の死因第1位だった。
「その後、抗生剤の普及によって肺炎死は激減しましたが、日本の高齢化と歩調を合わせるように、再び増加傾向に転じました」(医療法人社団「こころとからだの元氣プラザ」名誉所長で内科医の高築勝義氏)
専門家の間で、そうした肺炎死の増加と密接な関係があるとみられているのが「認知症」である。
日本では、予備群も含めた認知症患者は800万人以上とされるが、臨床現場では認知機能の低下によって誤嚥リスクが上がるとみられている。秋津医院の秋津壽男院長はこういう。
「認知症の人はどうしても、自分できちんと歯が磨けなくなったり、食べたものを飲み込まず口の中に残してしまったり、口腔環境が不潔になりがちです。口腔ケアをできないと、誤嚥によって細菌が肺に入り込む可能性は高くなる。
そうした背景は、なかなか統計には表われにくい。認知症の人が誤嚥し、肺炎になって亡くなった場合でも、死亡診断書の死因には『肺炎』としか書かないケースがほとんどですから」
さらに、肺炎死の増加には医療の進化によって“他の病気で死ねなくなった”という側面もある。
「長生きすればするほどかかりやすくなる病気です。脳梗塞になっても、がんが見つかっても医療の進歩ですぐには亡くならないようになりました。肺炎死はそれと引き換えに増えているといっていいでしょう。たとえば、がん患者の場合、抗がん剤で免疫力が低下していると肺炎になりやすくなる」(同前)
つまりはこの国でますます増えていく「死に方」といえる。では、どんな最期になるのか。