薬剤は、がん細胞の特性や新生血管の状況に応じて抗生物質や生物製剤、高カルシウム血症治療剤、βブロッカー、抗体製剤、抗炎症治療剤、活性型ビタミンD3、ビタミンAなどを少量ずつ組み合わせて使う。さらに、ナノサイズ(40~120ナノメータ径の粒子)にすることで、少量でもがんや炎症を抑え、痛みも減少させる。
「この治療は、局所麻酔による日帰りで実施します。大部の動脈付近に麻酔をかけ、そこから細いカテーテルを挿入します。がんの新生血管の大元を発見したら、事前に調合しておいた薬剤をピンポイントで投与します。例えば、肺のリンパ節に転移している胃がんの場合は、遠い転移部から薬剤を投与し、がんの栄養補給路を潰し、最後に胃の腫瘍血管にも薬剤を投与して終了します」(奥野院長)
抗がん剤は、ほとんど使用せず、少量の薬剤の調合ですむため、全身に対するダメージが少ない。また、投与して数分で新生血管は消滅する。1回ないし、数回の投与で寛解した症例もある。
血管内治療は、かかりつけの医師と連携し、使用する薬剤や治療時期、回数などを調整する。治療法がないといわれた患者の延命や痛みの軽減効果もある新治療だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年9月30日号