読売新聞社の調査によって、全国の大学の「留年率」が明るみになった。意外な学部における意外な留年理由とはなにか。コラムニストのオバタカズユキ氏が分析する。
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日本人の中にある“常識”の一つに、「日本の大学は入るのが難しくて出るのは簡単、欧米の大学は入るのが簡単で出るのは難しい」というものがある。欧米の大学が本当にそうなのか、入るのも難しい大学だって結構あるような気もするが、一方の日本の大学は昔も今もそう思われている。
大学入試さえ突破すれば後は楽勝だ、というイメージ。よっぽどサボらなきゃ、4年で卒業して当然という感覚。『大学図鑑!』という本を18年間も出し続けている私の中にも同じ“常識”があるのだが、実際の大学状況をつぶさに見ると、そんなの昔話だよ、と思う大学生がかなりいると分かる。
読売新聞が毎年行っている大規模調査をまとめた『大学の実力2017』が、先日、子会社の中央公論新社から出版された。同調査は、全国の大学に調査票を送り、入試の内実から教育体制の詳細までさまざまなデータを明らかにするものだ。今回は調査票を送ったうちの91.4%、682大学から回答を得たとのこと。他にはないデータが多く、その信頼性も高い貴重な調査だ。
その『大学の実力2017』を眺めていて、ふーむ、と思ったのが、上記の“常識”について。具体的には、大学・学部別に報告されている留年率(入学者数に占める留年者数の率)についてなのだが、「出るのは簡単」にしてはやたら高い数字が一覧表に散見されるのである。
小さな文字がぎっしり詰まったデータの一覧表から目視で拾ってみると、留年率の高い順にこんな具合となっている(非公表の大学もあるので順位付はやめた)。大学・学部(学科)名のあとに留年率の%の数字を添えた。
〔50%オーバー〕
大阪・外国語67.8、東京外国語・国際社会65.7、東京外国語・言語文化64.5、神戸市外国語・外国語56.4、いわき明星・薬55.1、愛知県立・外国語54.3、金沢・国際(人間社会)52.0、第一薬科・薬51.8、東京神学・神50.0、鶴見・歯50.0
〔40%オーバー〕
神戸・国際文化48.6、国際教養・国際教養48.5、日本・松戸歯47.4、創価・経済45.6、上智・外国語44.8、朝日・歯44.3、宇都宮・国際43.6、青森・薬43.4、立命館アジア太平洋・アジア太平洋42.2、東京・医(健康総合科)41.7、明星・情報41.4、九州保健福祉・薬(薬)40.7
〔30%オーバー〕
筑波・社会・国際39.3、九州・21世紀プログラム39.3、東京・教養(後期課程)38.8、千葉科学・薬(薬)38.6、太成学院・経営37.5、東京・文37.3、就実・薬36.1、創価・文36.0、日本・薬35.8、広島国際・薬35.3、立命館アジア太平洋・国際経営35.1、徳島・歯(歯)35.0、北海道医療・薬34.6、京都・法33.6、京都・文33.3、名古屋市立・医32.6、星薬科・薬(創薬科)32.4、長崎・歯32.0、法政・グローバル教養31.9、苫小牧駒沢・国際文化31.7、東京・法30.9、獨協・国際教養30.9、帝京・医30.8、琉球・観光産業科30.3、四條畷学園・リハビリテーション30.0
国公立か私立かの別を略し、学部の系統も一緒くたにしたので、パッと見、なんのことやらと感じるかもしれない。が、いまいちど「入学者の30%以上も留年者が出る大学・学部」という意識で、全体を見てほしい。いくつかの傾向が見えてくるはずだ。