かつて苛烈な表現で天皇を批判していた共産党の機関紙「しんぶん赤旗」で、近年、穏やかな表現が目立つようになってきた。その背景に何があるのか。フリーライターの清水典之氏がレポートする。
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天皇陛下をお迎えする新年の国会開会式に、今年、共産党議員が出席し、メディアで騒ぎになった。『しんぶん赤旗』の皇室報道を遡り、共産党がこれまで皇室に対し取ってきた態度を振り返れば当然の反応と言える。
1975年7月17日、沖縄海洋博で訪沖した皇太子明仁親王(今上陛下)と同妃が、糸満市のひめゆりの塔などを慰霊で訪れた際、新左翼系過激派が火炎びんを投げつける事件が起きた。
この「ひめゆりの塔事件」は、皇室に対するテロ事件であり、当時、マスコミはトップニュースで扱い、世論は大騒ぎになった。ところが、翌7月18日付「赤旗」の紙面に目をこらすと、「皇太子夫妻に火炎びん ひめゆりの塔付近で暴力集団」という見出しに180字ほどのベタ記事で事実を伝えるのみ。まるで些細な事件のような扱いだ。
1987年10月24日には、皇太子明仁親王が沖縄を訪問され、沖縄平和記念堂で天皇陛下(昭和天皇)のお言葉を代読された。それを報じた赤旗の記事が、「戦争責任にふれず 天皇のことば、皇太子が代読 沖縄・摩文仁」(1987年10月25日付)だ。
〈最高の責任者として侵略戦争をひき起こしたうえ終戦の時期をおくらせて沖縄県民を国内唯一の地上戦の戦場に投げ入れ、戦後は、米国にメッセージを送って沖縄の長期占領支配を求めたみずからの責任にふれないものとなっています〉
と激しく非難している。批判の対象は昭和天皇だとはいえ、皇太子が慰霊に訪れたことへの敬意の念が微塵も感じられない記事である。