観光庁がまとめた2016年版『観光白書』によると、2015年の国民1人あたりの国内宿泊観光旅行の回数は年間1.4回、宿泊数は同2.3泊にすぎない。一方、欧米の観光旅行宿泊数は、統計では年間20泊前後だが、実際に私が見るところでは30泊以上だ。
マッキンゼー時代の経験から言うと、たとえばイタリア事務所からは6月末に「See you in September.」という連絡が届き、7~8月の2か月は夏休みで誰もいなくなる。私たちが「なぜイタリアだけ2か月も休むのか」と文句を言ったら、「お客さんがいないから」という答えが返ってきた。
つまり、お客さんがバケーションで旅行に出かけてしまうため、コンサルタントはやることがないというわけだ。アメリカは事務所全体ではなく、個々人が自分の仕事の状況に応じてバラバラに2週間単位の休みを年3回くらい取得する。勤勉と言われたドイツも近年は1か月の休みを取るようになった。そうすると結局、日本だけが休めない。お客さんが休まないし、上司や同僚への遠慮、部下の手前などもあるからだ。
実際、総合オンライン旅行会社エクスペディア・ジャパンの「有給休暇の国際比較調査」(2015年)によると、日本の有休消化率は60%で、韓国(40%)に次いで世界ワースト2位である。しかも、日本人は53%が自分の有休支給日数を把握しておらず、これは他国を大きく引き離して第1位だ。
また、有休を取得することに罪悪感を覚える日本人は18%で、これも第1位となっている。休み方に関しては、日本は世界の中でも極めて特異な国なのだ。
ドイツの場合、夏季は6月下旬~9月前半、冬季は12月後半~3月末に約2週間ずつ休みを取るのが普通だ。冬季はスキーバケーションで、その時期は学校の地区によって異なっている。だからドイツのスキー場は週末や年末年始だけ大混雑する日本のスキー場と違い、平日も週末も年末年始も同じようにそこそこ混んでいる。これはスキー場やホテルにとっても、利用客にとっても非常にありがたいことである。