北海道の台風被害は1680億円にのぼるという。そのわりには東京のメディアからの報道は少ないのではないか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏の十勝レポート続編をお届けする。
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8月に北海道と岩手を襲った4つの台風。激甚災害に指定されるほどの規模で被害をもたらし、現地ではいまだ復旧、復興への道半ばだ。北海道の試算では、道全体の被害総額は、1680億円に上るという。
だが東京にいると、その後の被災状況はあまり見聞きしない。一部の番組でNHKは力を入れたが、台風が過ぎ去った後、特に民放ではその爪痕を見聞きすることはあまりなかった。なぜか。札幌に本社を置く地方局の社員はこう語る。
「在京キー局の情報番組は、他のキー局や新聞報道を横目で見ながらネタを選ぶことが多い。加えて地方局とはいえ、北海道は広大です。帯広にも支社、支局があるとはいえ人員にも限りはあるし、カバーエリアも広い。ひとつの映像を撮るのにかかる手間が、内地とはまったく違う」
十勝エリアは北海道内でも最大の面積で、全国の都道府県と面積で比較すると全国7位の岐阜県よりも広い。被災現場の映像ひとつ撮りに行くのも苦労するというのだ。ニュースなどで十勝が台風被害を受けていたのは知ってはいた。だが実際、9月中旬に十勝を訪れて、いかに十勝の被災状況を知らなかったか思い知らされた。
以下に、農家や周辺の関係者から拾った声を順不同で記す。
「そもそも今年は雨が多く、麦の収穫が8月下旬になった畑もあった」
「台風で、じゃがいもが根こそぎやられた」
「とうもろこしも、雨が多すぎて元気がなかった」
「雨に弱いブロッコリーの葉が伸びず、一部は腐ってしまった」
「芽室川が氾濫して、飼っていた牛が何頭か持っていかれた」
「敷地内を流れる小川にかかっていた橋も、川の氾濫で持っていかれた」
「増水した激流で、周辺の地形まで変わってしまった」