今年も秋刀魚(サンマ)の季節がやってきた。訪れたのは、日本一の秋刀魚の水揚げ量を誇る、北海道・根室の花咲港。
「よぉし、いくぞぉー!」
威勢よくかけ声が飛び、パンパンに膨らんだ網が漁船から吊り上げられると、港に運ばれたタンクへ秋刀魚がダダダッと流れ込む。銀色の魚群は闇夜の明かりの中では神秘的に、朝陽を浴びればキラキラとまばゆく光を放つ。
秋の味覚の代表格とされる秋刀魚だが、日本で食べられるようになったのは江戸期から。1772年の安永改元の頃に魚屋が「安くて長きは秋刀魚なり」と宣伝したことで注目を集め、庶民の食卓に上るようになったという。
近年、そんな庶民の食材に異変が起きている。東京都中央卸売市場の北海道産生サンマの卸売価格最高値(9月9日~15日)は、1kg当たり3240円。高値とされた昨年同時期よりは安いものの、10年前と比べると約2倍に高騰。大衆魚が一転、高嶺の花となりつつあるのだ。背景には漁獲量の減少が挙げられている。港の漁師も、「毎年この季節になると、お世話になった人たちへ秋刀魚を贈ってきたけど、こんなに獲れなきゃ贈ってあげられないよ」と、戸惑いを口にする。
今シーズンはまず、台風の影響が大きかった。主に8月から市場に出回る秋刀魚だが、今年は8月下旬以降に大型台風が相次いで北海道の周辺に接近し、漁に出られない日が続いた。
台湾や中国、韓国、ロシアなど、近隣の国や地域の漁獲量増加の影響も看過できない。特に台湾では和食ブームで秋刀魚人気に火がつき、1000トン級の大型船で秋刀魚をバンバン“乱獲”。漁獲高は世界一に躍進している。