大物政治家の回顧録といえば「政治本」の定番だが、ある回顧録が政界関係者の間で騒動を醸している。
7月に発売された本のタイトルは『YKK秘録』、著者は自民党副総裁、幹事長など数々の要職を歴任した山崎拓氏。派閥を越えた盟友の加藤紘一・元幹事長、小泉純一郎・元首相との関係を中心に、1970年代から2000年代にかけての激動の政界を、当時のメモをもとに振り返った書だ。折しも去る9月9日に加藤氏が死去したタイミングと重なり、同書は版を重ね、版元の講談社によれば現在は5刷となっているという。
政界の中心にいた山崎氏が明かす「記録」に政界関係者が注目するのは当然なのだが、実は永田町雀たちの目下の関心は別のところにあった。
同書には数多くの政治家や財界人、メディア関係者が実名で登場するが、その中で初版には名前があるものの、2刷以降に「消えた」人物がいた。それがNHKの小池英夫・編集主幹であることが、様々な憶測を呼んでいるのだ。大手紙の政治部OBが首を傾げて言う。
「NHK政治部のエースだった小池氏は、山崎氏に近い記者として永田町では知られた存在だった。大物政治家の回顧録に名前が登場するのは、“取材対象に食い込んでいた”という証明でもあるから不名誉なことではないし、読んだ限りでは、消えた記述に問題があるようにも思えない。特定の政治家と親密な関係を築いていることを公にされたくないのか」
確認したところ、初版で4か所に登場した小池氏の名前は、2か所で削除されていた。1つ目は、YKK結成から間もない1991年2月25日の場面。
〈加藤紘一が近くのバー「ロホネス」で政治記者たち(NHK諸星衛・小池英夫、読売新聞小田尚、フジテレビ渡辺奈都子各氏ら)と呑んでいたので合流〉
2つ目は、2000年3月9日に明治記念館でNHK会長(当時)の海老沢勝二氏らと会食したというシーン。この場には小池氏のほか、当時新人記者だった岩田明子氏(現在、安倍首相に“最も近い”といわれるNHK政治部記者)の名前もあるが、2刷以降2人の名は消えている。
どんな経緯があったのか。山崎氏の事務所はこう話す。