常態化する長時間労働を是正すべく、働く時間を自分で柔軟に決めることができる“フレックスタイム制”を導入する企業は増えているが、中には週5日のフルタイムを崩して「週休3日制」にしようとする動きも出始めた。
IT企業のヤフーも全従業員を対象に週休3日制の導入を検討しているとして、話題を呼んだばかり。本来ある週2日の休みを土日に限定しない方式で、給与体系や細かい導入スケジュールは今後詰めていくという。
これまでも週休3日の選択勤務を採用する企業はあった。
スポーツ用品販売の「アルペン」は1989年より〈増えた休日を勉強や趣味、スポーツに充てて仕事に活かしてもらいたい〉との趣旨から店舗勤務の社員に導入。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも、地域正社員を対象に休みの多さを前面に掲げた結果、人手不足の解消にもつながっている。
だが、週休3日を導入している企業のほとんどは、ユニクロのように店が忙しい曜日の出勤を条件にしたり、1日休みが増える分、週4日の労働時間を8時間勤務から10時間勤務に増やしたりと、一人あたりの仕事の効率や生産性が本当に維持できているか疑問を呈する声があったのも事実だ。
社会保険労務士の稲毛由佳さんに、週休3日制導入の功罪について聞いた。
「いまの時代、平日に公休日を設定することは何らおかしくありませんし、1日1~2時間程度の労働時間アップならば、仕事を続けられる許容範囲だと思います。IT企業のように業務を集中してこなしたほうが効率の上がる職種もありますしね。
むしろ休日を1日増やすことで、自由な時間が増えて子育てや介護などとの両立もしやすくなり、ワーク・ライフ・バランスの向上に役立てることもできます」
しかし、安易な週休3日制の導入は、かえって過重労働を招きかねない。稲毛さんが指摘する。
「休日を社員が代わり番こに取る“シフト制”の意識で週休3日制を導入すると、人が足りない曜日や突発的な事態が起きたときに、逆に休日を取り損なう確率が高まります。『特別な用事もないので、私が休みをズラして出ます』と、その時々の状況に応じてタガが緩んでしまうからです。
その結果、振替休日(代休)が溜まり、年次有給休暇がますます消化できないなど、休み自体が形骸化しかねません。週休3日にしたはずが、週1日しか休みが取れない逆転現象が起きたり、残業時間がよけいに増えたりしてしまっては意味がありません」(稲毛さん)