「一生に1度の買い物」と必死の思いで35年ローンを組んで買ったマンション。「売って老後の資金にあてようか」と売却価格を調べてみると──なんと購入時の5分の1になってローン残金にもならない。一方で、「意外と高く売れた」とホクホク顔の勝ち組もいる。命運を分けたのは何なのか。老後生活を左右する「マンション格差」の実態を追った。
ここに60代の2人の男性サラリーマンがいる。どちらも30年以上前にマンションを購入。子供たちは独立、会社も定年退職し、もう通勤の便を考える必要もない。
「いま住んでいるマンションを売って、田舎でのんびり暮らすのはどうか」
「将来的に老人ホームに入るとなった場合、家を売った資金で、どのレベルの施設に入れるか」
そう考えて、いま住んでいるマンションの資産価値を調べてみると、一人は“天国”を、もう一人は“地獄”を見た。
“天国”を見たAさんの話。
「35年前に東京23区内に約4000万円でマンションを買いました。15階建ての7階で中堅デベロッパーが手がけた56平米の3DK。最寄り駅まで徒歩5分で、東京駅まで乗り換え込みで約25分という物件。査定をしてもらったら、3500万円といわれた。購入時からほとんど資産価値が下がっていなくて驚きました」
一方、“地獄”を見たBさん。
「千葉県のニュータウンのマンションを34年前に約4000万円で購入しました。14階建ての12階で、旧財閥系デベロッパーが作った98平米の4LDK。最寄り駅までは徒歩11分で、東京駅まで乗り換え2回で50分かかります。広くてお買い得な物件だと思っていたので、それなりに値が付くと思っていたのですが……800万円と聞いて愕然としました」
立地や敷地面積、間取りが違うとはいえ、同じ時期に同じ価格で購入した物件で、資産価値にこれほど差がつく。この「マンション格差」はなぜ生じたのか。