田舎に住む女子高生・三葉(声/上白石萌音)は、小さく狭い町の人間関係にうんざりし、東京の華やかな生活に憧れを抱いていた。そんなある日、自分が東京に住む男子高生・瀧(声/神木隆之介)と夢の中で体が入れ替わるところから始まる、アニメ映画『君の名は。』。
9月22日までに774万人を動員、興行収入は公開28日で100億円を超えた。日本のアニメ映画界で100億円を超える興行を記録したのは宮崎駿監督の作品以外では初。勢いはとどまらず、新海誠監督著の『小説 君の名は。』も102.9万部(9月20日現在)を超え、関連書籍を含めると累計182万部突破。
もはや社会現象となっている『君の名は。』。「ただの恋愛アニメじゃないの?」そう思っているかたはもったいない。
「2010年代を代表するアニメ映画の真骨頂といっていいでしょう。ぼくが噂を耳にしたのは、ジブリ作品『思い出のマーニー』(1014年)が終わったあたりから。有能なアニメーターたちがみんな新海さんのところに集まって、何かやり始めるぞって業界がざわざわしていたんです」
こう話すのは、アニメ通で知られる漫才師「米粒写経」のサンキュータツオさん。新海監督の異色の才能は、これまで一部の熱狂的ファンに愛されてきた。が、ここにきて大衆のハートをつかんだ理由とは?
「アニメには大きく2つの考え方があって、宮崎駿さんに代表される《あっちの世界に連れて行くもの》と、高畑勲さん的な《必ず最後現実に戻ってくるもの》。この作品は後者なんですが、新海さんの高精細な映像美があるから、アニメーションとはいえ、現実とリンクしているんだと感じさせてくれる。2011年以降の社会情勢を経験した今、2016年に見る意味をしっかり用意していることが大人がハマれるポイントだと思います」
そのポイントをより具体的に解説すると…。