視聴率20%台で順調なスタートを切っているNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』。今までの朝ドラと同じように、ヒロインの子供時代が丁寧に描かれた。子役パートは朝ドラではおきまりだが、毎回、言われるのは「子役パートは要らないのではないか」という声だ。子役パートは本当に必要なのか? テレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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『べっぴんさん』の第1週が、例によって子役パートからはじまりました。「最初が面白くなければ、その後の放送は見ない」と結論を急ぐ視聴者が増え、「早くヒロインを出せ」と言われかねない中、なぜ朝ドラは子役パートを作り続けるのでしょうか? 脚本・演出、長年の視聴者、この2点に、その理由が潜んでいます。
何より、脚本・演出の面で子役パートは重要。そもそも子役パートには、「すべてはここからはじまった」というプロローグを担い、全編に渡るコンセプトを伝える役割があります。『べっぴんさん』でも、ヒロインの坂東すみれ(渡邉このみ)が、母に贈る刺繍のハンカチを通して、「べっぴん作りを一生の仕事にしていく」というコンセプトが描かれました。
「視聴者に主人公の性格を知ってもらう」という観点でも子役パートは欠かせません。どんな家に生まれ、どんな人々に囲まれて、どんな育ち方をしたのか。視聴者に幼いころから見守ってもらうことで、「主人公を好きになってもらおう」という意図があります。
これは裏を返せば、子役パートは、両親、兄弟姉妹、祖父母、幼なじみなど、「ファミリーの自己紹介をする期間」ということ。朝ドラは、半年間、25~26週、150~156話に渡って放送されるだけに、主人公だけでなく、主要人物のキャラクターをしっかり見せておく必要があるのです。
また、朝ドラの子役パートでは、主人公が苦しい環境に置かれたり、悔しい思いをしたりなどのネガティブなシーンが描かれるのが定番。その後、人生を切り拓いていく前の出発点となるのですが、『べっぴんさん』でも母・はな(菅野美穂)が亡くなり、すみれは悲しみに打ちひしがれながらも、べっぴん作りの夢を見つけました。