ここ数年、首都圏のマンション市場は都心部やその周辺で局地的なバブルが起きていたため、とても「憧れ」だけで住める環境にはなかった。だが、右肩上がりの上昇を続けてきた新築・中古のマンション価格は高止まりから下落傾向に転じている。
では、誰もが一度は住んでみたい、あの人気エリアも少しは身近になるのか──。
三井不動産レジデンシャル、住友不動産、三菱地所レジデンスなど大手不動産会社7社が提供するポータルサイト「メジャーセブン」が9月末に発表した【住んでみたい街アンケート2016年度】。同調査で2年連続のトップに輝いたのが「恵比寿」だ。
〈交通の便がよい〉〈飲食店が充実〉〈おしゃれ〉といった理由で、「吉祥寺」や「自由が丘」など住みたい街の“常連”を押さえて不動の地位を確保しつつある。また、リクルートの「スーモ」が毎年行っている住みたい街ランキングでも、これまで4年連続1位だった吉祥寺を抜き去り、恵比寿が首位に躍り出た。
そこで、住宅地としての恵比寿の評価を住宅ジャーナリストの山下和之氏に聞いたところ、意外な答えが返ってきた。
「恵比寿=高級住宅地というイメージを持たれている方も多いと思いますが、高い人気を得ているのは、周辺エリアの影響が大きいと思います。恵比寿アドレスには恵比寿、恵比寿西、恵比寿南がありますが、恵比寿は広尾、白金と接し、恵比寿西は代官山、そして恵比寿南は中目黒と接しています。
つまり、どの恵比寿も人気の高い住宅地と接しており、恵比寿自体の評価というよりは、それら高級住宅地のイメージに引っ張られ、実力以上にマンション価格を押し上げている観が強い。事実、恵比寿西ながらマンション名に代官山を冠している物件や、恵比寿2丁目にありながら広尾、恵比寿3丁目には白金を冠するマンションも多くあります」(山下氏)
実際、恵比寿のマンション価格はどこまで上がったのだろうか。
「恵比寿の新築マンションは、坪単価500万円台後半から600万円前後まで上がっています。20坪・66平方メートルとして1億2000万円と億ションになってしまうレベルです。渋谷や目黒であればそのくらいは止むを得ないイメージですが、恵比寿でこの価格帯では早晩売れなくなるような気がします。
中古価格も坪300万円台後半から400万円弱といったところで、20坪だと7000万円から8000万円と、これも高すぎる。すでに野村不動産アーバンネットが定点観測している物件価格は、10月1日時点の調査で前期比1.3%のマイナスになっています。
都心エリアの主要な中古マンションで下がっている物件がまだ少ないことを考えると、恵比寿の価格相場がやはり実力以上に上がっていることを反映した動きだと思います」(前出・山下氏)