東京一極集中を防ぐべく首都機能移転をとの掛け声はときどき高まるものの、東京に様々な物事が集中する状況は変わらない。ところが、鉄道会社は東京離れを進めているらしい。フリーライターの小川裕夫さんが、近頃続いている鉄道会社の“東京脱出”についてリポートする。
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2020年の東京オリンピックを見据えて、東京都の都市開発が勢いを増している。政府は地方創生を掲げて地方都市の衰退に歯止めをかけようとしているが、東京の一極集中は止まらない。東京の一人勝ちは、このまま続くだろう。しかし、鉄道会社に至っては少し事情が異なるようだ。
京浜急行電鉄(京急)は2019年に本社を横浜のみなとみらいに移転させる。京急といえば、品川を拠点にしている大手私鉄。沿線に羽田空港という日本有数のターミナル空港を抱えていることもあって、近年は訪日外国人観光客などの利用者も急増している。好調に業績を推移させている京急が、本社を移転させる狙いはどこにあるのだろうか?
「現在、京急が本社を置いている泉岳寺エリアは、東京都が進める再開発事業の区域になっています。再開発を機に、京急は本社の移転を決めました。京急は本社移転に際して”国内外の多くの人が集う豊かな沿線を目指す”をコンセプトにしており、品川だけではなく沿線すべての地域の発展を目指しています。そうしたことを勘案して、横浜に本社を移転させることにしたのです」(京急広報部)
長らく、京急は本拠地を品川に置いてきた。そのため、京急といえば品川といったイメージが定着している。
しかも、JR東海がリニア新幹線の始発駅を品川駅に設置することを決め、品川駅周辺は都市開発が活発化している。そうした要因もあり、品川エリアは確実に成長が見込まれている。本拠地を品川にしている京急にとっては、強力な追い風といえるだろう。
それにも関わらず、京急が本拠地を品川から横浜に移すのは、横浜市が固定資産税・都市計画税の減免や助成金などで積極的に企業誘致を働き掛けてきたことも一因になっている。長年、培ってきた企業イメージが大きく変わってしまう心配はないのだろうか?
「これまでの京急は品川のイメージが強くあるのは事実です。ところが、実際に京急線で利用者がもっとも多いのは横浜駅なんです。2015(平成27)年度の統計でみると、横浜駅は1日平均で約31万6000人が利用しています。2位が品川駅で27万2000人です」(京急広報部)
品川から横浜に移転すると聞くと、都落ちのような悲壮なイメージで語られがちだ。しかし、脱東京化を図る関東私鉄は京急だけではない。
西武鉄道(西武)は、1986(昭和61)年に本社を東京都豊島区の池袋から埼玉県所沢に移転させた。まさに、脱東京化の大先輩にあたる。同社広報部によると、本社移転には大きく3つの理由があったという。