築地市場の豊洲移転問題について、テレビ各局は問題だと煽るばかりで不正確な情報を流すことも時にある。そこで『週刊ポスト』では、新聞・テレビによる“間違いだらけの豊洲報道”についてまとめてみた。視聴者の不安をことさらに煽っているのが豊洲の水質をめぐる不正確な報道だ。
◆地下空間の水からベンゼン検出→不検出でした
豊洲新市場の「謎の地下空間」(地下ピット)とそこに溜まっている「謎の水」の問題は新聞もテレビ各局も大きく報じてきた。
東京新聞は地下空間から採取した水の検査で〈微量のベンゼンを検出した〉と報じたが(9月24日付夕刊)、翌日朝刊で〈「不検出だった」の誤りでした〉と訂正記事を出した。
この水については環境学者で都の専門家会議座長の平田健正氏が自ら地下ピットに入って水質をチェックし、「水道水と同じレベル。飲んでも大丈夫」と事実上の安全宣言をしたが、見出しなどで大きく取り上げられることはほとんどなかった。
◆地下水から「基準値以上のベンゼン検出」→排水基準は満たしています
次にワイドショーが一斉に取り上げたのは都が行なっている豊洲の地下水のモニタリング調査だった。
テレ朝『モーニングショー』(9月30日放送)では深刻な表情の羽鳥キャスターが「基準値を超えるベンゼンが検出されました。これは今後大きな影響が出てくると思います」とコメント。他局でも「基準値以上のベンゼン」を取り上げた。
だが、地下水には飲料水として利用する場合の「環境基準」と、事業所からの排水に用いられる「排水基準」がある。豊洲の地下水は飲料にも、魚の洗浄や市場内の清掃にも利用されることはない。
テレビは、飲みもしない水が「飲料水の環境基準を上回った」ことを重大事件のように扱っているのだ。