ここ最近、コンビでありながらピンでテレビ出演する芸人が増えている。なかには、漫才やコントなどのステージ以外で、コンビとしてほとんど見なくなった芸人もいる。そうした動きが加速しているのはなぜか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
ピース・綾部祐二さんが来年4月からニューヨークで活動することを発表しました。コンビは解消しないものの事実上の活動休止であり、来年3月でレギュラー番組9本を降板することからも、本気のほどがうかがえます。
綾部さんは渡米の理由として、「以前からハリウッドが夢で挑戦を決めていたが、来年40歳になるから」「先生(相方・又吉直樹さん)の芥川賞受賞が刺激になった」を挙げていましたが、その背景には芸人をとりまくテレビ業界の事情が垣間見えます。
見逃せないのは、コンビ芸人の単独出演が年々増えていること。アンジャッシュ、博多華丸・大吉、ハライチ、オードリー、メイプル超合金など、年齢や芸歴を問わずコンビ芸人の単独出演が増えていますし、サバンナ・高橋茂雄さんや麒麟・川島明さんなどは情報番組のコメンテーターをそつなくこなしています。
かつて制作サイドは「コンビで呼ぶのがセオリー」、芸能事務所も「まずはコンビで売れてから」と考え、双方とも「そのほうが持ち味を発揮できる」とみていましたが、現在は必ずしもそうとは言えません。
特に現在のバラエティーは、放送時間よりも長く撮影したなかから、面白いコメントやボケ、ツッコミなどをダイジェスト版のように編集しています。短い言葉でテンポよく笑いを取れる芸人でなければ画面に映りにくく、その技量がなければ、いないのと同じ。「それなら話術と個性のある1人だけで十分」ということなのです。