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45才女性が壮絶半生告白「生家の記憶から逃れられない」

 千葉県の坂上幸子さん(仮名、45才)が、過酷な半生を告白する。(全3回の最終回)

(本稿は、「自らの半生を見つめ直し、それを書き記すことによって俯瞰して、自らの不幸を乗り越える一助としたい」という一般のかたから寄せられた手記を、原文にできる限り忠実に再現いたしました)

【前回までの内容】
 15才のある日、学校から帰ると母が自殺していた。第一発見者の筆者に、警察は殺人の疑いをかけた。母の死を受け入れられない父もまた、「お前が殺したのか?」と責めた。がまんできず姉に助けを求めると、それが新たな家族の不幸の始まりになった。

◆怒号と暴力の家に姉は再び戻ってきた

 母が自死した日から、わが家は、何もかも変わった。母は3年前から精神を病んでいて通院していたが、どんなに調子が悪い日でも、食事の用意だけはした。

 白米は文化鍋で炊く。みそ汁の具は2種類。みそは合わせみそ。だしは煮干。漬けものはいつも食卓にあること。父が子供の頃からしてきた食生活を、忠実に守った。後妻に入った母の意地だったのだと思う。

 母が自死した直後から、それを父は、15才の私にさせようとした。慣れない家事をすることだけでも大変なのに、「ちがうんだよ。ママはそうはしなかっただろ」と、母と私を比べて声を荒らげる父に耐えられない。私は姉に助けを求めた。「帰ってきてほしい」と。

“先妻の子”である姉は、子供の頃から父の暴力を受けていた。茶の間に血しぶきが吹き飛び、それを私と母は黙って拭いた。

 その姉に私は頼った。父と私と姉と3人で暮らせば、どんなことが起きるか予測がついたのに私は疲れ切っていた。

「わかった」

 電話の向うの姉は、やっと承諾してくれた。父との生活は恐怖だったに違いないのに。

◆あの女のものが家に入るのは耐えられない

 案の定、実家に戻ってほどなく、姉は摂食障害に陥った。日に日にやせ細っていく姉に、父はやさしい言葉をかけるどころか、うっぷんをぶちまける。冷蔵庫を開けた父が突然、怒り始めた。

「何だ、これは!」

 茶封筒に包まれた瓶詰めの保存食をつかんで、父はヒステリックに姉の名を呼んだ。その使い古した茶封筒の宛名に、姉の実母の名前が見えた。たぶん姉が実母からもらったものなのだろう。

 姉と実母が、時々会っていることは、父も私も生前の母も知っていた。何をそんなに怒るのか。

「別に大したことじゃないじゃない」と私が言いかけると、父は、「嫌なんだよ。この女のものが、この家に入ってくるのは耐えられないんだよ」と吐き捨てた。姉はうつむきながら、「ごめんなさい」と謝った。

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