「手術のための入院で数十万円かかったとしても、みなさんなんとかして払えるんです。でも、手術はほんの入口。それから長い治療期間が続きます。乳がんの場合、乳房再建する人も多く、その費用も必要です。それに、治療が落ち着くまで、検査や治療のため頻繁に病院に行かなければならず、そのたびに患者は仕事を休まなきゃいけない。有給休暇がなかったら、その分お金をもらえず収入も減るし交通費もかかる。副作用で、別の診療科や病院にかかったら、その分の交通費や治療費も必要です。ホルモン治療も5年、人によっては10年と長く続きます」(黒田さん)
さらに、闘病にかかるお金で忘れがちなのが、それまでと変わらずに生活するために必要な額のこと。たとえばウイッグ。女性にとって脱毛したときに欠かせないものだ。2013年2月にステージIIIの乳がんと告知された森下正美さん(61才)は、「20万円かけた」と話す。
「ぜいたくだと思われるかもしれないけれど、高いウイッグはすごく自然に見える。全然違うんです。1万円台のものはどうしても“カツラだ”とすぐにわかってしまう。月に1回、シャンプーしてもらいに行くなど、お手入れも大変だけれど、これがあるだけで、外を堂々と歩けるし、人前にも出られるんです」
一般的に、数十万円する医療用のものでなくても、数万円のおしゃれウイッグで足りるといわれている。1万円程度のものを気にせず使える人もいるが、考え方は人それぞれだ。
6年前に乳がんを発症した坂本絵里さん(46才)は、5.5cmのがんが見つかり、リンパ節も切除した。そのため、術後に腕のむくみが出て、「ひどい時は、1回2万円のリンパマッサージに週2回通っていた」と明かす。
「男の子が3人いて、下の子はまだ小学1年生。とにかく忙しくて休んでいられない。家事をするにも、腕のむくみがどうしてもつらくって、高いとは思ったけれどマッサージの出費はどうしても削れませんでした。もちろん保険は適用されないので、全額実費です。がんが大きくて、そのまま手術できない状態だったので、小さくするため手術の前に抗がん剤を6か月やったんですが、1か月に36万~37万円でした」
※女性セブン2016年11月3日号