日本国内各所のデパートが、苦境に立たされている。9月30日、日本最北端のデパート、西武旭川店(北海道・旭川市)が閉店した。同店最後となる物産イベント「全国うまいもの大会」は多くの買い物客で盛り上がり、感極まって涙する人も。ここだけではない。今年だけでそごう柏店、西武春日部店など4店舗が、来年には三越千葉店や堺北花田阪急など、5店舗が閉店を予定している。
「今日は三越、明日は帝劇」。かつてそんな「ハレの日」の場だったデパートが、いつからこんなことになってしまったのか?
ショーウインドー一面に、「日本免税 銀座三越8F」という文字。そして少し小さな文字で「どなたでもご自由にご覧いただけます」と日本語が添えられている。覗いてみると、500平方メートルはある広いフロアに、客は10人もいない。40人ほど待機していた店員は暇をもてあましていたのか、記者を見つけると「やっと客が来た」と顔を輝かせ、次々と声をかけてきた。女性店員の1人が苦笑交じりに、「団体客が来る夕方はもうちょっとにぎわうんですけどね…」と言う。よく聞くとイントネーションが違う。どうも店員の大半が中国人のようだ。
ここは、今年1月、鳴り物入りでオープンした銀座三越の免税フロア「Japan Duty Free GINZA」。空港の免税店と同じように、パスポートと海外に行く搭乗券があれば消費税のみでなく、関税や酒税、たばこ税までもが免税になる。しかし日本から出ない人にとっては関係のないフロアだ。
丁寧な接客が売りの銀座の高級デパートが、ここ数年、中国人観光客の「爆買い」効果で大いに賑わってきた。しかし今は前述の通り、閑古鳥が鳴いている状態。わずか2~3年前の全盛期には、爆買いといえば200万、300万円が当たり前だったのが、今はせいぜい十数万円がいいところ。
中国の内需主導や、円高・元安となった今、高額品は売れなくなり、大量に仕入れた高級時計やブランド品は、在庫ばかりが残る結果となっている。
1991年のピーク時に9兆7130億円だった百貨店市場規模は、2015年には6兆1740億円まで縮小している。バブル崩壊後、少子高齢化、デフレなど内需減少の影響をもろに受けたデパート業界。
「さらに直近の厳しい状況を作り出したのは、百貨店にも責任の一端がある」と話すのは、経済評論家の平野和之さんだ。
「いちばんいい例が銀座です。銀座はインバウンド爆買い消費に合わせてどんどん再開発を進めました。百貨店もこれに乗ったわけですが観光バスが正面玄関にどーんと横づけして、大量の中国人が大騒ぎして買っていく。昔ながらの銀ブラする街ではなく、きらびやかだけどよくある“アジアの一都市”になってしまったんです。