経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回はいよいよ大詰めを迎えるアメリカ大統領選の二人の候補のメンタリティに注目。
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史上最低最悪と揶揄される今回のアメリカ大統領選で、最も人気のない候補者といわれた民主党ヒラリー・クリントン前国務長官と、共和党のドナルド・トランプ氏による最後のテレビ討論会がネバダ州ラスベガスで行われた。予想以上に淡々と冷静に論争で始まったのだけれど、途中からは過去2回のテレビ討論会同様、非難合戦が繰り広げられた。
わいせつ行為の証言が次々に上がる中、またもや暴言を吐いて“やっちゃった感”の強いトランプ氏。討論会後の世論調査の結果は、メール問題などを抱えながらも、やはりクリントン氏が優勢。そんな舌戦の立ち居振る舞いから両候補者の心の内を読んでみよう。
選挙などで最初に目につくのは、やっぱり服装や髪形だろう。候補者のイメージ戦略が盛んに行われているアメリカでは、有権者の目にどんな風に映るのかは、選挙の行方を左右するほど重要。
例として挙げられるのが、最初のテレビ討論会が行われた1960年の大統領選。現職の副大統領だったニクソン氏を、若手のケネディ氏が巧みなメディア戦略で破ったのだ。この時、テレビはまだ白黒。平成生まれの人には、ちょっとイメージがわかないかも…。
グレーのスーツに白のシャツ、ぼけた色のネクタイとメリハリがない上に、メイクなしで疲れた顔に映ったニクソン氏に対し、濃紺のスーツに白のシャツ、赤のネクタイとコントラストをはっきりさせ、メイクをほどこし顔映りもよく新鮮で溌剌としたイメージを演出したケネディ氏。今見ても、おそらく結果は同じだろうけど、次世代のリーダーとして有権者の心を掴んだのは、もちろんケネディ氏だ。
さて、今回の大統領選第1回目の討論会、背景は鮮やかな青。大方の予想を裏切りトランプ氏は青のネクタイに黒のスーツ。なんと、クリントン氏が赤のツーピース。
ここ一番の勝負時には赤と思っていたので、トランプ氏が青をチョイスするとは意外。オバマ大統領が選挙戦で用いたように、新しいリーダー像として誠実で冷静沈着、頭脳明晰なイメージを印象づけたかったのだろうけれど、背景が青では冷たさや不安、憂鬱感を増幅させて逆効果。散々攻撃され続けたから、視聴者や有権者に少々、青でクールダウンしてもらいたかったのかもしれない。
加えて1回目は座ったままの討論形式。動きがなくては、青はますますネガティブイメージを強めてしまう。そのためもあってか、健康だとアピールしていたにも関わらず、何度も鼻をすする音をマイクに拾われ、トランプ氏にとって思わぬマイナス点だったはず。