米海軍大学中国海洋研究所のピーター・ダットン所長は、中国の当面の狙いは「日本を領土問題での二国間協議に引き出すことだろう」と語った。日本が圧力に屈して二国間協議に応じれば、それだけで中国側の大きな勝利となる。日本政府は「尖閣は日本固有の領土であり、領土紛争は存在しない」との立場を保っているからだ。
ダットン氏は「アメリカのいまの役割は軍事衝突を抑止することだ」とも述べた。いまの尖閣事態が日中の軍事衝突をも生む危険を懸念する発言だった。同海軍大学教授で中国海洋研究所の研究員トシ・ヨシハラ氏は「中国はまず日本側の尖閣の施政権を突き崩そうとしている」という。
中国は尖閣の日本領海にいつでも入れることを誇示して恒常的な存在を確立することで日本の施政権の空洞化を図る。その間、尖閣上陸が可能な軍事能力を築きながら日本の出方をうかがっている、というのだ。
日本の施政権は尖閣防衛の上で極めて重要である。日米安保条約はアメリカが「日本の施政の下にある領域」を守ることを規定している。だからオバマ政権は尖閣諸島も日米安保条約の適用範囲だと言明したのだ。その施政権が崩れれば、アメリカの防衛誓約も揺らいでしまう。
以上、ジアラ、ダットン、ヨシハラ三氏は中国が究極には軍事力の行使をも辞さずに尖閣奪取を目指す一方、日本やアメリカの反応を事前の揺さぶりで探っていると見る点で共通していた。
※SAPIO2016年11月号