とはいえ、マニアに広めただけでは、ゲーム専用機市場の拡大は望めない。なにしろ家庭用ゲーム機市場は近年低迷を続け、ハード機+ソフトの国内市場は3302億円にとどまっている。その一方で、スマホ向けゲームアプリ市場は9989億円と1兆円の大台に迫る。
任天堂も時流に逆らってばかりはいられないと、昨年4月にDeNAと資本・業務提携をしたのを皮切りにスマホゲームに参入。今年はスマホゲーム「ポケモンGO」の熱狂的ブームを仕掛けたり、12月にはiPhone向けに「スーパーマリオブラザーズ」の新作「スーパーマリオラン」の配信を発表したりするなど、“スマホ戦略”を加速させている。
もし、販売台数が振るわない「Wii U」の後継機と位置付けた「ニンテンドースイッチ」までコケてしまえば、ハード機の売れ行きを収益柱としてきた任天堂のビジネスモデル自体も転換を迫られる事態になろう。
「過去に販売したゲーム機の傾向をみていると、国内発売から2週間で50万台以上売るスタートダッシュがかけられない機種は、その後の浮上も見込めずハード機ビジネスとしては失敗に終わっています。まずはスイッチも50万台の壁が破れるかどうかが成否のカギとなるでしょう。
ただ、ここ最近の『ポケモンGO』ブームや“安倍マリオ”効果のおかげで、任天堂のIP(知的財産)に対する認知度は世界中で高まっています。そうしたIPの強さを活かしてゲーム専用機の魅力を改めて広めることができれば、商売としてはまだ十分に成り立つと思います」(前出・安田氏)
果たして、任天堂はスマホゲームに奪われたゲーム専用機の需要を取り戻し、再び業績寄与の好循環へと“スイッチ”させることができるのか。厳しい環境下で乾坤一擲の大勝負に打って出る。