職場以外で仕事をする、いわゆる「テレワーク(在宅勤務)」を認める企業が増えている。最近でもユニ・チャームが、来年1月より全社員(製造現場を除く国内約1200人)を対象に在宅勤務制度を導入することを発表し、話題を呼んでいる。自宅のみならず、喫茶店や図書館など集中して仕事ができる場所なら制限を設けないという。
総務省ほかの調査によれば、昨年末時点で16.2%(対前年比4.7ポイント増)の企業で何らかのテレワーク制度を導入しており、週8時間以上を社外で働く“テレワーカー”は約790万人にのぼる。場所を選ばず仕事ができるモバイル端末の普及や、育児・介護・病気療養などの理由から、中小企業でも自ら在宅勤務を申し出る人が増えているという。
だが、「きちんとした仕組みもないまま安易に在宅勤務を選択してしまうと、後で後悔する羽目になります」と警鐘を鳴らすのは、社会保険労務士の稲毛由佳さんだ。稲毛さんに、テレワークに苦戦している人たちの具体例を挙げてもらった。
【ケース1/建築CADオペレーター(33歳・女性)の場合】
子供を認可保育園に入れることができず、無認可保育園となったため、保育料負担の面から、短時間勤務ではなく在宅勤務を希望。会社には前例はなかったが、なんとか了承を取り付けた。
もともと通勤に片道1時間強かかっていたので、在宅勤務にすればフルタイムで働くことができる。1日6時間の短時間勤務では給料が25パーセント減ってしまうので、収入減の心配もないと、自分からすすんで在宅勤務を希望したのだ。
ところが、いざ自宅にいると、つい、溜まった家事に手を出してしまう──。天気がよければたまった洗濯物を片付けたいし、料理好きなので、仕事をしながら煮込みメニューに腕をふるう。結局、家事に時間をとられ、通常の所定労働時間内に仕事が終わらない。
そうこうしているうちに、子供のお迎え時間。お迎え後は、子供に食事をとらせ、お風呂にいれると、あっという間に夜の9時、10時になってしまう。こうなると、会社にいる時のように、同僚に助けてもうこともできない。そこから残った仕事を片付け、寝るのが深夜3時を回ることも……。
自分から希望しての在宅勤務なので、今さら「やめます」とは言い出しにくい。給料が減っても困る。まして、日中に“ながら仕事”をした結果でもあり、会社から咎められるのもイヤなので残業は未申請。
自分でも、だんだん家事と仕事の境界線が曖昧になって、会社でやっても残業が発生する業務量なのかどうかすらよく分からなくなってきた。