これまで大谷翔平(22、日本ハム)の二刀流を評価するにあたって引き合いに出されてきたのが、メジャーリーグで唯一、「10勝+10本塁打」を記録したことのある“野球の神様”ことベーブ・ルースだった。2014年に大谷が、「11勝+10本塁打」を記録した際は、ベーブ・ルース級と称された。そして、今季はついに「10勝+22本塁打」という未知の領域に。その活躍を、一体どう表現すればいいのか──。
「もはや、“野球マンガの主人公でもそんな奴おらへんやろ”とツッコミを入れたくなるレベルですよ」
笑いながらそう話すのは、高校時代に報徳学園(兵庫)のエースとして夏の甲子園で全国制覇し、近鉄に入団してからは打者として活躍した金村義明氏だ。
「大谷が入団1年目の春季キャンプで、初ブルペンの投球と、その後の紅白戦でいきなり2安打したシーンを鮮明に覚えています。僕はもともと、大谷の二刀流は大賛成だった。新人時代から体はどんどん大きくなり、22歳となった現在も、投打に伸びしろを感じます」
自身が持つ日本球界最速記録を更新したのもさることながら、打撃でも大きく成長の跡を残した。
「今季は、バットスイングの速さが増しました。イチローとは違って長打力を持っているし、ピッチングでも、大谷と同じ年齢だった頃のダルビッシュより上をいっている。過去の選手にたとえようとしても、もう適切な例が見当たりませんよ」(金村氏)
では、さらに日本球界の歴史を遡ってみるとどうか。現役時代は驚異的なスタミナから“ガソリンタンク”と呼ばれ、プロ野球史上最多となる949試合に登板、350勝を挙げた米田哲也氏は、「スピードガンがなかった時代を振り返っても、大谷以上の球速の投手はいないんじゃないか」と語る。低めのコースに力強い直球を、正確に投げられる大谷の才能を最大限の賛辞で評価した。
「速い球を低めに集められるところが、同い年の藤浪晋太郎(22、阪神)との違いです。CSのソフトバンク戦での165キロも低めでした。体全体、特に下半身を使わないと、あの球は投げられない。体が柔らかくてスタミナもある証拠。とにかく素晴らしいと思う。
この世界ではよく、高めの威力ある直球を、“球が浮き上がるよう”と表現します。カネさん(金田正一)も、勝負球のストレートは高めだった。キレがあるから浮き上がっているように見えるわけですが、打者からすれば同じような伸びのある球を低めに投げられた方がより脅威です。その意味では大谷のほうが凄い」