国民が知らない間に、かつてないほどの年金制度の大転換が行なわれようとしている。年金生活者が今現在受け取っている受給額を減らす「年金減額」法案だ。今回の改正案では、物価が上がっても下がっても現役サラリーマンの平均賃金が下がれば年金生活者の受給額をマイナス・スライドさせるという制度に変わる。
年金法改正案が成立すると、5年後の平成33年から減額ルールが適用される。では、受給額はどのくらい減らされるのか。厚労省はその試算を出し渋った。
そこで行政書士でもある井坂信彦・代議士(民進党)は過去10年間の物価と賃金の変動推移をもとに現行制度と年金額を比較し、新ルールなら10年間で年金額が5.2%下がっていたことになるとの試算を弾き出した。
国民年金は1人「年間約4万円」の減額、厚生年金の場合、夫婦2人で月額約22万7000円(年間約271万円の標準モデル世帯)で、「年間約14万2000円」の減額になる計算だ。
年金生活者には14万円の収入減の影響は大きい。経済評論家の荻原博子氏は定年後の「セカンドライフ」が大きく変わると語る。
「年金生活者世帯の家計は今も赤字で、年金では足りずに預貯金を取り崩しながら生活している方が多い。
それでも今は60代はリタイア後に夫婦で旅行、70代はガーデニングなどの趣味にお金を使う人が多いが、年金が減っていくとなると、自分たちの娯楽費や交際費はできるだけ使わないというマインドになる。
その先は生活を切り詰める。まず食費を抑え、外食はしない。孫への小遣いは減らしたくないから、新聞をやめる人も増えるでしょう。服や家具、耐久消費財は新しく買いません。預貯金でどれだけ食いつなげるかをシビアに考える」