「生涯一捕手」を標榜した野球評論家の野村克也氏は、今のプロ野球界に大きな危機感を持っているという。新刊『野村の遺言』も話題となっている野村氏が、プロ野球界の現状に物申す。
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選手として26年、監督として24年。南海時代は打倒・巨人を掲げ、日本シリーズで長嶋茂雄・王貞治らと鎬を削り、監督としては弱小といわれたヤクルトを3度の日本一に導いた。1935年生まれ、81歳になる私の人生は、プロ野球の歴史とほぼ重なる。
そんな私が最近、試合を観ているとため息しか出ない。「なんだこれは」というシーンばかりで、「何を考えているんだ」とボヤいてばかりいる。精神衛生上、まことによろしくない。
例えば今年の日本シリーズは、25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島と、二刀流・大谷翔平を擁する日本ハムの対戦となった。特に大谷はシーズン中、投手としても打者としても好成績を収め、投手ではプロ野球最速を更新する165キロをはじめ、160キロ台の速球を連発して話題をさらっていた。
まあ、これはいい。情けないのはパ・リーグの連中だ。年間を通して大谷に二刀流で好き勝手やられるなど、プロとしては大失敗だし、論外である。私なら徹底的に大谷を研究して、攻略法を見出していると思うが……。
私は、真のプロとは「恥の意識」を持つ者だと思っている。
野球ではミスや失敗は必ず起こる。だからそれを恐れてはいけないが、「こんな恥ずかしい思いは二度としたくない」と「恥」に思って自分を戒めるからこそ、失敗をした原因を究明し、修正しようとする。
それが自尊心を高め、問題意識を呼び起こし、自主性と自発性を促すことで、より自分を高めようとする原動力となる。それがプロ意識だ。大谷にやられっ放しという失敗を繰り返した今のパの連中に、「恥」の概念はあるだろうか?