運動会は年3回。朝のお迎えバスが到着する先は園舎でなくグラウンド──そんな“スポ根幼児園”が、入園キャンセル待ちが列をなすほどの人気だ。熱血指導の先生に食らいつき、泣きながら走る園児たち。正式名は「バディスポーツ幼児園」。1981年に鈴木威・園長(66歳)が設立した「認可外保育施設」だ。
園児4人からスタートし、現在は都内4か所、神奈川3か所で開園。総勢1700人が通うマンモス幼児園となった。小学生などを対象にしたスポーツクラブも運営する。幼児園はどこもキャンセル待ち状態だ。幼い子供を相手にしたスパルタ教育の現場をジャーナリストの広野真嗣氏が取材した。
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理屈はわかっても、その突き抜けた徹底指導についていけず途中でやめる人もいる。送迎バスの前で癇癪を起こして登園に抵抗する園児の姿は可哀想でもある。
そうした指導法に世間の目が最も厳しくなったのは2012年、2歳の園児がプールで溺れ、救急車で運ばれる事故が起きた時。一時は入園希望者が急減したが、迷いながらも事故の翌年度入園させたのは、上の子を通わせていた“リピーター”の親たちだった。
吉田千晴さん(39歳)もその1人。長男(小3)に続いて入園した次男が、来年卒園する予定だ。
「朝はあっちが痛いこっちが痛いと泣くけれど30分後には笑って走っている」
自身も卒園生の小池安佐子さん(30歳)は2人の息子を通わせた動機を語る。
「スポーツに力を入れている他の園も見たけれど、大人になってまで幼稚園の思い出が残るきつさはなくて、物足りなかった」
“根性”を身につけた卒園生の活躍も目覚ましい。公務員ランナーの川内優輝(1993年卒)を筆頭に、ラグビートップリーグで活躍する須藤拓輝(1998年卒)やサッカー日本代表の武藤嘉紀(1999年卒)らアスリートだけでなく、NHK朝ドラで主演を務めた女優・土屋太鳳も小学生時代、バディの陸上クラブでスポ根を叩き込まれている。