国内

卵子凍結 300万円かかったが「いつか産める安心感ある」

卵子凍結と採取には300万円の費用がかかる

 いつかは絶対に子供がほしい――そう望む女性の間で、卵子凍結が急速に広がっている。卵子のもととなる細胞は、その時期に一生分が作られる。その数はおよそ700万個。しかしその数は出生時には約200万個に減少し、初潮を迎える思春期までに20万~30万個にまで減る。その後も年齢を重ねるごとに数が減っていく。

 数が減るだけでなく、質も下がっていく。つまり妊娠しにくくなるのだ。大阪市にあるオーク住吉産婦人科の医師、船曳美也子さんが語る。

「妊娠率は32才くらいから減り始め、37才くらいから年を追うごとに急減していきます。40才を超えると、それがさらに加速して、たった1才年を重ねただけでも、卵子が持つ妊娠する能力はかなり衰えます」

 この卵子の老化が注目されるようになったのは、2012年のこと。きっかけは、同年2月に放送されたNHK『クローズアップ現代』、同年6月に放送されたNHKスペシャル『産みたいのに 産めない~卵子老化の衝撃~』だ。多くの女性たちが卵子が老化することを初めて知り、それが不妊につながることに衝撃を受けたのだ。それならば、老化する前の、妊娠する能力の高い卵子があるうちにそれを採取し、保存しておきたい。そう考える女性たちによって、卵子凍結に熱い視線が注がれるようになった。

「今は忙しくて産めない」「まだパートナーに巡り会えていない」――そんな社会的な理由で選ぶ人が増えているのだ。その選択に対しては、多くの人が肯定的になっている。

 10月14日に岡山大学が発表した全国調査の結果によると、健康な女性の卵子凍結を「認める」は27.9%、年齢制限など「条件付きで認める」が28.3%と計56.2%、肯定派が過半数を占めた。前回の2014年に発表した調査では、肯定派は約27%だったので、この間にその数は倍増している。

 子供のいないアラフォー女性からの支持率はさらに高い。子供のいない35~39才女性の88.4%、子供のいない40~44才の72.7%が肯定する結果になった。調査を行った岡山大学教授の中塚幹也さんはその背景をこう分析する。

「まず、卵子凍結の技術がより身近になってきていることが挙げられます。とりわけ、“当事者”である女性たちにとっては、『認める』ということ以上に、やってもいいと前向きに考える人が増えたのでしょう」

 10月26日放送の『クローズアップ現代+』では、卵子の凍結を行うクリニックが行うセミナーに女性たちが殺到している姿が映し出された。こういった変化に同調するように、少子化対策の一環として卵子凍結を希望する34才までの女性に対して助成を行う自治体や、卵子凍結にかかる費用の3割を会社負担とする企業も出始めている。

『クローズアップ現代+』では、卵子凍結によって出産した例も紹介している。40代半ばの女性は、凍結卵子を使って出産した。卵子凍結を行ったのは30代後半、独身のとき。看護師として夜勤を含む激務を続けるなか焦りを覚え、それでもいつかは子供がほしいという思いで踏み切った。

「卵子の老化をいったんストップできた」

 手術を受けた後、そう感じたという。40才を過ぎて結婚し、最初は自然妊娠を試み、その後、体外受精を繰り返したが子供には恵まれなかった。ところが、凍結しておいた卵子を使ってみたところ、すぐに妊娠。理解されるか不安だった女性は夫へ凍結卵子を使ったことを伝えていなかった。伝えたのは出産後。彼女の不安とは裏腹にとても喜んでもらえたという。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン