国内

日本の教育は50年遅れ、取り組むべき3つの人材改革

「日本の教育は50年遅れ」という大前研一氏

 毎年、世界の大学への評価がランキング形式で発表されるが、日本の大学の順位は東京大学が39位、京都大学が91位でアジア首位も逃しており、あまり評価が高くない。経営コンサルタントの大前研一氏は、すっかり遅れてしまった日本の教育が取り組むべき三つの人材改革を提案する。

 * * *
 前回、イスラエルと台湾が小国でありながら21世紀型の優れた起業人材を輩出している理由について解説した。一方で、日本の人材育成の遅れぶりは目を覆うばかりである。

 それを象徴するのが、MIT(マサチューセッツ工科大学)がこのほど発行した『MITテクノロジーレビュー』の2016年版「35歳以下の35人のイノベーター」という特集だ。これは毎年、MITが世界的に注目される若き革新者を35人選ぶもので、今年はそのうち9人を台湾・シンガポールを含めた中国系が占める一方、日本人はゼロだった。

 日本では、過去の業績に対して贈られるノーベル賞にばかり注目が集まるが、最先端のテクノロジーを研究する優れた若手の人材不足は、もっと問題視されるべきだと思う。世界の大学ランキングで東京大学をはじめとする日本の大学が低迷しているのも、その証明の一つにすぎない。

 もとより「国家百年の計」は人を育てることである。それは明治政府も、終戦直後の日本政府もよくわかっていた。だから明治時代は富国強兵や殖産興業、戦後は加工貿易立国のための規律正しく平均値が高い人材を数多く育成することに力を注いできた。

 しかし、前号で述べたように、21世紀のICT(情報通信技術)時代は、個人が国家を超えるような経済を形成して莫大な富と雇用を生み出すようになる。そのため、平均値が高い人材を数多くではなく、数は少なくても傑出した人材を育成しなければならない。ところが、日本の教育は20世紀の工業化社会のままであり、世界の先進国から50年以上遅れてしまっている。

 今後、日本が21世紀の世界で活躍できる人材を輩出するためには「三つの改革」が必要だと思う。

 一つ目は、国が“これから求められる人材”の明確なイメージを持つことだ。それには、前号で紹介したイスラエルや台湾、あるいは北欧の教育が参考になる。これらの国に共通しているのは「世界をひっくり返す天才」や「世界のどこに行っても通用する人間」をつくる教育を行なっていることだ。21世紀の教育は、そういう人材をいかにして輩出するかがカギになる。

 したがって、運動会の徒競走で順位を付けない、などという日本の教育の“悪平等”は排除しなければならない。文部科学省の学習指導要領に縛られない自由な教育を広め、能力がある人材には特例も認めて、不平等だの不公平だのと言わせないようにすべきである。そもそも、文科省が定めた一つの学習指導要領に日本中が従う、という全体主義的な発想そのものがずれていることに気づかねばならない。

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン