「遺伝カウンセリングでは、遺伝子が異常だったとき、どんな危険がこれから起きる可能性があるのか、知ることによって受けるメリットとデメリットなどを説明します。この際に、家族にはどこまでどう話をするかなども決めていきます」(前出・島田さん)
国立がん研究センター中央病院によれば、1998~2015年までの遺伝子相談外来受診者1453名のうち、実際に検査を受けたのは911名、約6割といわれている。
また、検査自体は、採血のみで終わる。体への負担は少ないが、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の場合、自由診療で保険が利かないため、高額な費用がかかってしまう。
「施設によって違いますが、全額自費負担なので、金額は高くなります。当院の場合は初回カウンセリングが1万800円。静脈採血が216円、検査費用が20万5200円。結果を伝える外来が6480円。合わせて22万円ちょっとかかります」(吉田さん)
もし異常が見つかり、乳がんと卵巣がんにかかるリスクが高いとわかったら、治療費もかさむ。
「家族の遺伝子も調べるときは、1人約5万円がかかります。また、遺伝子に異常がある場合の卵巣がんの予防は、卵巣を切除するのが一般的な方法です。ただ、保険が利かず約80万円。乳房に関しては、切除は一般的な予防法ではありません。検診を若い頃からこまめに行い、早期発見を促します」(吉田さん)
予防のための検診は大事とはいえ、マンモグラフィーや超音波検査の金額は、1回1万円ほど。一般家庭にとって決して安い出費ではない。
《遺伝子検査は想像以上にセンシティブなこと》
麻央がそう吐露したように遺伝子は家族で代々受け継がれるからこそ、言葉にできない重みがある。
「充分理解して検査を受けないと、家族の間に溝ができることもある」と指摘するのは医療ジャーナリストの増田美加さん。
「結果が陽性だったら、その遺伝子を子供や姉妹が持っている可能性が約5割ある。だけど、人によってはまだ健康なのに『がんになる可能性が高い』ことを知りたくない人もいます。それを伝えてしまってトラブルになることもあります。だから、伝えるかどうか、カウンセリングの段階で決めておくことが重要です」
※女性セブン2016年11月10日号