健康のためには運動がよいといわれても、まとまった運動はなかなか難しい。忙しさのあまり、運動不足の自覚がありながら、毎日を過ごしている人も多い。その日常生活に、実は死亡リスクを高めるものが含まれていることがわかっている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、その危険性と予防について語る。
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食欲の秋。肥満になりやすい季節の到来である。と同時に、スポーツの秋、運動習慣を身に付けるチャンスである。そこで、今回は運動、食、睡眠のカマタ流ゴールデンタイムという観点から、今すぐできる健康づくりのコツを紹介しよう。
オーストラリアのシドニー大学の研究チームが、45歳以上の中高年約23万人のライフスタイルと死亡率の調査をした。いちばんよくない生活習慣は、「喫煙」と「運動不足」だが、「座りっぱなし」や「睡眠の過不足」「食生活の乱れ」もよくないことがわかった。興味深いのは、これらのいくつかの要素が重なったとき、死亡リスクがさらに高まることだ。最悪パターンでは、死亡リスクが4倍も高まる。
その一つが、「運動不足」と「座りっぱなし」「寝すぎ」という動かない系の組み合わせである。
運動不足とは、運動時間が週150分未満とされている。一日に換算すると、20分以上の運動が必要ということになるが、この20分の運動ができない人が多い。
座りっぱなしがよくないというのは、アメリカの調査でも明らかになっている。男女12万人を対象に、一日6時間座る生活の人は、3時間座る人を比べると、15年以内に死ぬ確率が40%高いという。オドロキの数字だ。
デスクワーク中心の仕事をしている人は、立ち仕事の人に比べて、心臓病になる確率が2倍になるというデータもある。
座りっぱなし予防のポイントは「1時間に2分」である。1時間に2分だけでも、体を動かす。これなら仕事中毒のサラリーマンでもできる。違う階のトイレに行ったり、コピーのついでにラジオ体操の半分くらいをやったりするだけでもいい。これはアメリカの国民健康栄養調査の膨大なデータから分析された。なんとこれで死亡リスクが33%も低下する。運動の2分間はゴールデンタイムだ。一日の仕事中に5回やると10分。
簡単なミーティングは立ってやるのもはやってきた。5~10分足踏みしながらの会議はお勧め。座りっぱなし予防なのだ。