本誌・週刊ポスト企画『名古屋ぎらい』は、大きな反響を呼んだ。記事は名古屋のローカル局の情報番組でも何度も取り上げられ、ついには「名古屋をどうすれば良いか」というシンポジウムまで開かれた。
もしかして、名古屋人が自らを省み、「意識改革」を始めているのでは? そう考えた本誌はまず「あの人」にもう一度話を聞こうと考えた。
かつて本誌取材に「名古屋が嫌い? 東京モンが何いっとるんだ!」と吠えた河村たかし・名古屋市長(67)である。しかしいったん口を開くと、有り余る「名古屋愛」があふれだし、トンデモナイことに──。
──河村市長、ご無沙汰しております。あれから本誌『名古屋ぎらい』特集は社会現象化し、名古屋市が自ら実施したアンケートでは国内主要8都市のうち、「訪問したくない都市」第1位に輝きました!
河村市長(以下、「 」内はすべて河村氏)「まァ、ええことじゃないの。モスト・アンビジタボー・シティちゅうことだがや(編集部注・英語で「最も訪れたくない都市」といっているらしい)」
──決して名誉だとは思えませんが、市長は気にしていないご様子ですね?
「当たり前じゃないの。だって名古屋はニッポンでナンバーワンの産業都市なんだから、そんなことにイチイチ目くじら立てておれんでしょう」
──日本一? 我々の取材では「日本三大都市」も危ういようですが……。
「愛知県の製造品出荷額等は44兆円。2位神奈川県の18兆円、3位大阪府の17兆円と比べても段違いだがね。トヨタ自動車のおかげではあるけど、圧倒的な経済力ですよ。横浜なんて東京とセットみたいなもんだし、大阪・京都・神戸は近くで寄り添っとるからあれだけ大きな顔しとる。名古屋はこれに孤軍奮闘で戦っとるんだから、もう比べようもないですよ。あとついでにいえば、ワシは年間の給料800万円。日本一給料の安い市長だがね」
──それは聞いてません! でも、それなら「面白くない街」「訪れたくない街」に挙げられるのはなぜ?
「それはちょっと的を射とるところもある。戦後の焼け野原になってから、名古屋は産業最優先でやってきたでね。名古屋は古くて狭い路地を焼失後、前のように復興せんで、8メートル以上のでっかい道路ばかりを作った。だから大阪の法善寺横丁みたいな、風情のある小道がなくなった。それが面白味をなくしとるところはあるかもしれんで。
でも、名古屋は良い街ですよ。住みええのは住みええんです。待機児童は3年連続ゼロで、敬老パスもどえらく安く、値上げもなし。だけど東京と違って森進一ショーや八代亜紀ショーをやらんから、それが面白くないってことでしょう」
──森進一や八代亜紀は、名古屋でディナーショーをやってると思いますけど。
「それぐらいエンターテインメントの供給量が少ないっていう例えだがね! ワシも森進一ショーは行ったがや」