冷凍メンチカツを食べた人がO-157による食中毒事件が起きた。食中毒の「原因」は肉と思いがちだが、実は意外な料理での感染例もある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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先月末、病原性大腸菌「O-157」による集団食中毒が起きた。原因は神奈川県平塚市の食品会社が販売した、生肉入りの冷凍メンチカツ。重症家庭での調理時に加熱が足りず、中心部まで火が通りきらなかったのが原因とされている。食中毒が疑われる患者は11月4日時点で、合計24人となった。
O-157はウシやヒツジ、ヤギなどの消化管内に常在しているとされる。そのイメージから牛肉を介して感染する印象が強いかもしれないが、調べてみると国内で牛肉を介して発症した例は決して多くない。しかも近年に集中している。
病原性大腸菌の食中毒として、記憶に強く刷り込まれているのは2011年に富山県で起きた焼肉店での事件だろう。焼肉やユッケを食べた24人が食中毒症状を発症し、5名が死亡した。もっとも実はこの件にはO-157は関与していない。O-111という違う病原性大腸菌由来の事件だった。
O-157による食中毒は翌2012年、神奈川県の焼肉店などでも起きているが、実は国内におけるO-157による大規模食中毒事件で原因食品が牛だと確定されているものは、それほど多くない。むしろ目立つのは、野菜の浅漬けによる感染である。2000年以降の主な例は次の通り。