4つに分類され、密接距離は身体に容易に触れることができ、恋人や家族など親しい関係が入れる距離のこと。それより広く、手を伸ばせば届く程度で、友人等との関係で取られるのが個体距離。そして、仕事仲間などや知らない人とやりとりする時に取られる社会距離、そして講演会などで取られる公共距離がある。
密接距離は松本選手の心理的テリトリーだから、試合前、それを侵す相手は誰であろうと倒すべき敵になる。侵入者があれば、即座に身体が反応し戦闘モードに突入するのだろう。
リオの時も3か月前から一切触れなかったと、真顔で話していた。寝ている間に迂闊に触れでもしたら、反射的にグイと掴まれ、ドサッと投げられる恐れがあるのかも…(笑い)。
普段は「キツネ」に自分を例え、柔道の時はバケるという。負けまいと闘争心を高め試合の準備をするのは、俳優が役になりきり、身体をも変化させていくという感覚に近いのかもしれない。
そんな松本選手のことをよく理解している彼の存在が発覚したのは、9月。地元金沢のラジオ番組で彼氏がいると告白した時。続いて、TBSのTV番組『ジョブチェーン』で彼氏の存在を聞かれ、「います」と何の迷いもなく即答。4月にプロポーズされていたというから、即答するのも当然のことだ。
…と、書いていて思い出した。そういえば、彼の存在をほんのり匂わせたことがあるのだ。あれは、リオ五輪の銅メダル獲得後のインタビューでのこと。
「今、したいことは?」と聞かれ、「温泉に行きたい」と答えた松本選手。実は彼女、温泉好きで一人でも温泉に行くという。アナウンサーが続けて「ご家族で?」と聞いた。すると一瞬、間があいて、松本選手は視線を上に向けた。
あれっ? 誰かを思い出しているのかも?と思ったのだが、まさかこの時は、そんな相手がいるとは想像もせず。
視線を前に戻しながら、「そうですね、家族でもいいし、(一人)ぼっちでも」と笑ったのを見て、なんとなく仕草と返答に違和感が。家族や自分だけなら、上を見なくてもよかったのに。
と思ったものの、誰か友達の顔でも浮かんだのだろうと当時はスルーしてしまっていた。今にして思えば、あの時きっと、パッと脳裏に浮かび上がったのは、彼の顔だったのではないだろうか。
さて、こういう会見に付きものの「旦那さんが浮気したら?」という質問には、持っていたマイクがほんのわずか、クッと持ち上がった。こういう質問が出るとはわかっていながら、やはり「浮気」と言う言葉を耳にして、マイナス感情から無意識のうちに手に力が入ったのだろう。
だけど、そんな感情を「離婚です」と即答で打ち消した。「結婚は覚悟」と話した松本選手らしいきっぱりとした物言いだった。
1年間は休養するという松本選手。東京五輪では、さらにパワーアップした「野獣妻」の姿を、ぜひとも見てみたい。