国内

ナマハゲが優しくなって宿題の面倒まで見てくれる

怖いばかりでは生き残れないのか AFLO

「悪い子はいねがー!」──鬼のような風貌で模造の包丁を手にし、大晦日の晩に子供のいる家庭を訪ね歩く。その荒々しさに怯えた子供たちは、泣き叫びながら家の中を逃げ回る秋田県男鹿半島周辺に伝わるナマハゲ。この奇習が変貌しつつある。フリーライターの岸川貴文氏がレポートする。

 * * *
 男鹿半島から南に下った秋田県にかほ市。この地にはナマハゲに似た「アマノハギ」という伝統行事が存在する。小正月の1月15日、家々を訪ねて子供を戒めるのはナマハゲと同じだ。ところが近年、「あまり子供を怖がらせないでほしい」との要望を受け、“鬼”が優しくなっているという。

 アマノハギの主催者側が事前に各家庭に電話連絡すると、そもそも訪問を拒まれることも多い。

「140軒の集落で子供のいる家庭が15~16軒。そのうち家に入れてくれるのは今では5~6軒になってしまった」(同市小滝集落でアマノハギの保存会を主宰する吉川栄一さん)

 そこで子供を戒めるだけでなく、宿題の面倒を見る“オプションサービス”が登場したというのだ。奇怪な風貌の「アマノハギ」が玄関先に現れると、子供たちは最初ギョッとするが、「宿題やったのか、どれ見せてみろ」などと優しい言葉をかけられるうちに場はなごみ、楽しげにテーブルを囲むことさえある。

「時代のニーズに応えていかねばね」と、前出の吉川さんは言う。

 厳しい意見に晒されるのは男鹿のナマハゲも同様だ。近年は、否定的な意見が相次いだという。男鹿市観光協会の佐藤豊さんが語る。

「子供をいじめているように見えるらしく、『児童虐待ではないか』と言われることがあります。過去には『包丁は凶悪事件を連想させる』といった指摘さえありました」

 凶悪事件とはなんとも穏やかでない。「観光客誘致にナマハゲを利用した結果、特異な風貌だけがピックアップされてひとり歩きしてしまうようになり、風習の意味が正しく伝わっていない」(佐藤さん)ことが、ナマハゲへの無理解を生む一因のようだ。

 そもそもナマハゲとは、火ぶくれを意味する「なもみ」を「はぐ」からきている。つまり、ナマハゲには寒さの厳しい地で囲炉裏の火にあたってばかりの(火ぶくれができるような)怠け者を戒める意味がある。「アマノハギ」の「アマノ」も当地では「火ぶくれ」を意味する。

 今では子供のいる家庭を対象とした風習になったが、かつては大人も「標的」になった。嫁や婿が怠け者であったときにはずいぶんと懲らしめられたという。

 ただし、このナマハゲ、怖がらせるばかりが能ではない。新年の祝賀を告げる「神様」でもある。訪れる家ではお膳とお酒でナマハゲを歓待する。

「一年を家内安全に過ごせた家にだけ来る。それは家の主人にとっては喜ばしいことなのです」(佐藤さん)

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン