どんなに不幸なことがあっても、どんなに辛いことがあっても「私は負けない」──。一般のかたから寄せられた手記を、原文にできる限り忠実に再現いたしました。離婚後に夫が自殺した石岡恵美子(東京都・41才)の場合──。第3回目となる今回は、最終回です。
【前回まで】
私が起業した会社がうまくいくにつれ、“主夫”になった夫とのセックスが苦痛になった。しかも夫はまったく自立をしようとせず、私に頼るばかり。3人の子供のため、離婚を避けようとしたものの、新恋人ができてしまう。「男ができたから離婚してください」と告白すると、夫は離婚に応じた翌月、首吊り自殺をした。
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◆離婚成立後直後に、夫が死を選んだ場所は
Sくんが首を吊ったのは、子供たちがまだヨチヨチ歩きをしていた頃、よく家族でバーベキューや自転車の練習に行った大きな緑地公園。
いったいどんな光景を目にしながら、32年の短い生涯を閉じたのでしょうか。
人はいろいろと言います。「完全なあてつけだよ」
「あなたがいないと、生活ができなくなるから、死ぬしか方法がなかったんじゃない?」
そうだろうか。男と女、夫婦としては、私はダメだったけど、子供たちから見たら、父親と母親。これだけは永遠に変わらないことなのに、自殺? お葬式で死に顔を見てから余計、混乱していました。そして、突然、襲った激しい頭痛と不眠。
坂道を転がり落ちるようというけれど、私の場合、そんな生やさしいものではなく、落下、です。割れるように痛い頭を抱えて、仕事場に足を運んでも、電話に出られない。仕事の約束が守れない。当然のことですが、今までの取引先は離れ、4人いた従業員は、いつの間にかいなくなっていました。
母親にすがると、「わかった」と連れて行かれたのが心療内科でした。通院しながら、スーパーの閉店間際の半額以下の割引弁当を狙っていましたが、それも数か月。とうとう貯金が残り10万円を切りました。
仕事が大好きで、少しくらい熱があっても、働いているうちに治ってしまう。そんな私が働けない。雇ってくれるところもない。結局、生活保護を受給するしかないという現実。
カーテンを閉め切って布団にこもって泣いている母親を、子供たちは徐々に避けるようになりました。