「このままでは日本の財政は破綻する!」──財務省とメディアはそう煽り、国民は「それなら増税もやむなしか」と思い込まされている。しかし、経済評論家の上念司氏は、日本は「借金大国」どころか、世界一の「金持ち国」だとデータを用いて解説する。つまり、財務省やメディアは自らの都合のために嘘をついているのだ。
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財務省が今年8月に発表した6月末時点での「国の借金」は、1053兆4676億円だった。大手メディアが大本営発表そのままに「国民一人あたり830万円の借金を抱えている」と報じるのも、もはや“恒例行事”となっている。
年々増え続ける「国の借金」は、2013年に「1000兆円」を突破。その規模は国内総生産(GDP)の2倍に上る。少子高齢化により社会保障費は膨らみ続け、今にも財政破綻するという「日本悲観論」が蔓延している。
確かに「1000兆円」の借金は莫大だが、負債の金額の多寡だけを見て経済を議論するのは全くのナンセンスだ。
一般的に銀行が企業や個人に融資する際、事業者の財務体質が健全かどうか、成長性があるかどうかが査定の基準となる。しかし、政府の財政について語られる際、その視点がごっそりと抜け落ちている。
財務省HPで公表されている政府の負債や資産を示す財務書類(バランスシート)を見ると、2014年度末の日本政府の負債額は1172兆円とあり、確かに1000兆円を超えている。しかし負債に隠れて見逃されているものがある。約680兆円の「資産」だ。なぜかこの数字に目を向けられることは少ない。
680兆円はアメリカの資産(300兆円)の2倍以上にあたり、前年に比べても27兆円も増加している。1年に27兆円も資産を増やしている国が、なぜ財政破綻寸前なのだろうか。
負債総額から資産を引いた本当の負債(純負債)は、1172兆円の半分以下の492兆円ということになる。この額は日本のGDPを下回る。
2012年にアベノミクスが始まってから、円安の影響もあり政府資産は毎年10兆~30兆円増え続けている。加えて、税金を集める徴税権、通貨発行権、日銀保有の国債残高など財務書類に記されない要素を加味すれば、ギリシャのような財政破綻は考えられない。日本財政は健全であるということをもっと強調すべき状況なのだ。