がん治療では、入院よりも通院のほうがメーンとなっている昨今。治療と仕事の両立は可能なはずだが、がんと診断された後に離職する割合は、約3割だという。また、がん患者が再就職するのもかなり難しいという。
がん患者の就労支援をしている『一般社団法人CSRプロジェクト』の藤田久子さんは、かつて復職後の働き方で、苦しんだ1人だった。
9年前に乳がんで左胸を全摘出した時、藤田さんは団体職員として仕事をしていた。手術、抗がん剤治療を経てホルモン治療を受けながら復職。6か月も休み、充分に療養したからこれまで通り働けると思い、フルタイムで休職前の部署に復帰した。しかし…、
「以前のようには働けませんでした。ホルモン治療の副作用がすごかったのです。ホットフラッシュで汗が突然ドッと出るので、常に着替えを持ち歩いていました。あとは、関節が痛んだり、うつ状態になったり…」(藤田さん)
復職してから3か月、大規模な人事異動に対応できず、再度休職。2度目の復職時には会社と話し合いの結果、フルタイムではなく、別の部署に短時間勤務で復職することになった。
「会社は、やる気もあるし、もう治ったと思っていたので、これまで通り仕事ができると思っていたそうです。2度目の休職でそうではないことがわかり、短時間勤務で徐々に体を慣らしていくことを提案されました。そのとき、私自身も自分の体調や状況を充分に伝えていなかったと気づきました。
患者はどうしても、後ろめたさや負い目でいっぱいになって肝心なことを伝えていないことが多いです。治療の見通しや“どんな仕事をどの程度できるか”といった状況を具体的にきちんと説明し、お互いに納得できるよう話し合うことが大事です」(藤田さん)
今年2月にステージIの乳がんを告知されたものの、手術を受けて2か月後には職場復帰を果たした女優の南果歩(52才)は、少し前のインタビューで、仕事復帰した後の心境をこう吐露していた。
《最近では、もうちょっとできるはずなのに、と思いながら休まなくちゃいけなかったり…。体力的にというより、精神的にきついな、と思うことが正直あります。抗ホルモン剤は、更年期障害に似た症状を引き起こすんです。この薬を、5年間飲み続けなくちゃならない》(『HERS』9月号)
薬をのみ続けた結果、自分に何が、どのように起きるか今はまだわからない。しかし南は、「50年以上生きているなかで、これもひとつの味わい」と、受け入れて、仕事も楽しんでいるという。
仕事をどうするか──ゴールの見えない闘いになるからこそ、それは患者本人だけの問題ではない。家族もまた同じように悩み、葛藤する。
テレビ局に勤める佐藤敦子さん(仮名、35才)は、2年前、3才年上の夫に喉頭がんが見つかった。それは結婚直後のことだった。