11月11日は、中国で「独身の日」。「1」が連続した日付が独身者を連想させるため始まった記念日で、独り者同士のパーティやプレゼント交換が行われてきた。ここ数年、ネット通販では双十一(シァンシーイー)と呼ぶ大バーゲンの日として知られ、一年で最も多くの商品が売れる日だ。中国ネット通販大手アリババの場合、2015年11月11日単日の売上高は約912億元(約1兆7300億円)で前年の約571億元から約1.5倍に、今年はさらに大きく上回ると見られている。
中国ネット通販の盛り上がりは、越境ECの台頭により外国企業にとっても取り組むべき課題になった。中国に現地法人を設立せず出店できる越境ECへ興味はあるものの進出は慎重といわれてきた日本企業だが、最近は相次いで乗り出している。とくに11月11日「独身の日」は重要なセールス日で、昨年は9月からアリババグループが運営する中国消費者向け越境ECサイト「天猫国際(テンマオ、Tmall Global)」で「LOHACO」をテスト運用していたアスクルが、11月11日に本格オープンへ切り替えた。
2015年の記録をみると、11月11日の中国のEC市場が、日本企業からみても特別な日だとよくわかる。同日にドラッグストアチェーンのキリン堂は、約4億5000万円の売り上げを記録。ユニクロは中国法人が出店する「天猫」での業績ではあるが、11月11日だけで前年比2倍以上の約6億元(100億円超)という、とんでもない数字の売上を記録した。2016年11月11日も、新しい顧客を求める日本企業が加わる予定だ。
そのうちの一社に、美白化粧品で知られる株式会社クリスタルジェミーがある。同社出品の理由について、アリババ株式会社の藤堂泰樹・Japan MD centerマネージャーは、商品のよさはもちろん、決断の速さも中国でのネット通販に向いていると考えたからだという。
「国土が広大なため店舗がゆきわたらないこともあり、中国でのネット通販は日本より日常的です。日本の商品には人気が高いものが多いのですが、中国ではまだ、よく知られていない良いものも提案したいと考えており、それに合った日本企業ということでお願いしました。また、決断と仕事が速い会社なので、日本企業としてはあり得ない準備期間の短さでしたが、ひょっとしたら受けてもらえるかもしれないと思い、相談したのが始まりです」
出品の相談をされたとき、クリスタルジェミーの中島香里・代表取締役社長は「私もスピードがあるほうだと思いますが、アリババさんはもっとスピードがあって驚きました」と振り返る。
11月11日に出品と決めたものの、その日まであと3か月を切ろうとしていた。時間がないと従業員たちは悲鳴を上げたが「天猫にデビューするという出来事は最初で最後。二度とないこの機会に、悔いを残さないようにしましょう」(中島社長)と鼓舞し、準備をすすめた。
「おかげさまで、テレビ通販ではすべてのカテゴリで1位を獲得するなど弊社の商品は日本のお客さまに高く評価されてきました。ただ、高齢化と人口減少がすすむ国内だけでは限界があります。そのため世界進出を考えていて、すでにタイではテレビ通販が始まりました。実は以前、小規模ですが中国進出を試みたところ、うまくゆかず撤退しています。いつかリベンジしたい気持ちもあったところに『天猫』出品の話をいただいたので、決断できました」