日本の宝とも称されるようになった大谷翔平、その価値はいかばかりか。米メジャーリーグに詳しいスポーツジャーナリストの古内義明氏がレポートする。
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北海道日本ハム・ファイターズを4年ぶりのリーグ優勝に導いた大谷翔平。北海道の瞬間最高視聴率は47.5%(ビデオリサーチ社調べ)と驚異的な数字だったことは、記憶に新しい。
北海道から離れること数千キロのアリゾナ州スコッツデール。この地、ストーブリーグの方向性を決めるゼネラル・マネージャー(GM)が一堂に会するGM会議が行われ、大谷の注目度は急激に高まっている。このオフは108年ぶりの世界一に輝いたカブスからFAとなった160キロ左腕チャップマンがいるものの、投手の目玉が少なく、大谷待望論が早くも沸き起こっているからだ。
メジャーリーグの公式サイト「MLB.COM」が、「もし日本ハムがポスティングを容認すれば、“日本の二刀流”オオタニは市場を揺るがすはずだ」という特集を組めば、「ニューヨーク・ポスト」(電子版)は、「日本の“ベーブ・ルース”大谷に3億ドルの値札」と刺激的に報じた。この記事を書いたのは、名物コラムニストのジョエル・シャーマン。よく知る男だが、球団関係者とのパイプは太い。大谷は来季のオフまで来ないとしつつ、現時点でのメジャーでの評価を論じていた。
メジャーのスカウトが最初に大谷の存在を意識したのは、花巻東時代だった。ドラフトに先立って、メジャーの複数球団が花巻まで「大谷詣で」に行く前代未聞の出来事もあった。だが、日本ハムのドラフト戦略が功を奏して、大谷は日本を選択。栗山英樹監督の「二刀流」という方針で、ここまで大きなケガもなく、投手と打者の両面で、大きな進化を遂げた。投手として、日本球界最速となる165キロを記録すれば、打者としては22本塁打を打ち、自身2度目となる同一シーズンで「二桁勝利と二桁本塁打」を達成。プロ野球史上初となる「10勝、100安打、20本塁打」という離れ業をやってのけた。
今年3月、日本ハムがアリゾナでキャンプを行い、メジャーの首脳陣やスカウトにとって、格好のショーケースになった。目の肥えたスカウトたちには、生の大谷は映像で見るよりもはるかに刺激的に映った。それは報道する側も同じだった。大谷のために「Two-way Player(二刀流)」という形容詞が使われ、活字が躍るようになった。『ボストン・グローブ』紙の名物記者ニック・ファルドは、「打者でも、投手でも、メジャーのオールスター級の選手になれる」と太鼓判を押す。
それでは、大谷がメジャーに移籍する場合、一体いくらの巨額なマネーが飛び交うことになるのか。一つの指標として、ニューヨーク・ヤンキースと日本人最高額で契約した田中将大の「7年総額1億5500万ドル(約161億円)」が挙がるはずだ。田中の年俸は23億円強であり、今季メジャーでも21位タイと高額年俸選手である。
しかし、大谷はいまやヤンキースのエースにもなった田中を凌駕することになりそうだ。大谷のセールスポイントは、「23歳という若さ」、「二刀流という並外れたポテンシャル」、「マーケットバリュー」の3つに集約される。取材を総合すると、現時点でメジャー移籍した場合、大谷に付けられた値札は、「7年総額200億円以上」になるはずだ。
現役メジャーリーガーで、総額200億円の超大型契約を勝ち取った者は、大よそ1200人中、わずか10人しかいない強者ばかり。メジャーで1球も投げたことがない大谷が、いかに高い評価を受けているかが分かるだろう。