国内63万人の登録競技者人口を誇るバスケットボールは、長らく統一リーグ誕生が待ち望まれていた。だが、実業団が中心だったNBLと、地域主体のプロリーグとして発足したbjリーグ、両者の軋轢は深まるばかりで、国際バスケット連盟(FIBA)から五輪予選への出場権まで剥奪された。
ここで白羽の矢が立ったのが川淵三郎だ。結論からいえば未曾有の混迷を半年で解決し、今年9月のBリーグ開幕に結びつけた。この難事業を切り抜けた、川淵氏いわく「独裁力」の真髄にノンフィクションライター・中村計氏が迫る。
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会うなり、サッカー日本代表に対する「愚痴」から始まった。
「今、サッカーを雑誌で特集しても、あんまり売れないらしいね。本田(圭佑)、香川(真司)に次ぐ、スターが出てこないからね……」
続いて、監督のハリルホジッチの采配に対しても、チクリとやる。ただ、その口調に陰湿さはなく、カラリとしている。そういう形で常に情熱を放出していないと、体温調整がうまくできないのかもしれない。
Jリーグの生みの親といっていいだろう、日本サッカー協会の元会長である川淵三郎を評するとき、二言目に出てくるのは「独裁」という言葉だ。週刊誌報道等で、そう叩かれたことも一度や二度ではない。
独裁と言えば、渡邉恒雄(読売新聞グループ本社代表取締役主筆)、石原慎太郎(元東京都知事)、橋下徹(前大阪市長)などの名前が真っ先に浮かぶが、それらの人物と川淵の印象は少し異なる気がする。「似合わない?」と笑う川淵に、独裁という響きから連想される威圧感は、ほとんどと言っていいほど感じられなかった。
「でもバスケットボールのときは、ほとんど独裁だったね。10人中10人が反対しても、こうしない限りは成功しないと思ったら、突っぱねた」