公称827万世帯を信者に抱え、国政選挙にも大きな影響を与える宗教団体・創価学会に変化が起きている。カリスマ的存在である池田大作・名誉会長の教団内での位置付けが変わったのだ。表舞台に姿を現わさなくなって久しい池田氏の敬称を変えた意味を読み解く──。
◆別格の「崇拝対象」
「1面の紙面を見て、“一体何が起きたのか”と驚きました」
古参の学会員は率直な感想を口にした。11月5日、創価学会の機関紙「聖教新聞」は、トップ記事でこう報じた。
〈我らは仏意仏勅の教団 大法弘通の『創価学会仏』〉
〈「三代会長」の敬称を「先生」と明記〉
これらは、前日に開かれた第72回総務会で議決された「創価学会会則」の改訂内容である。
11月18日を創立記念日とする創価学会では、例年この時期に大きな発表がなされることが多い。昨年は学会員が日々の生活の中で読むお経の内容や読み方などについて定めた「勤行要典」に新たな内容が加えられた。牧口常三郎・初代会長、戸田城聖・第二代会長、池田大作・第三代会長を「永遠の師匠」と位置付け、会員たちが毎日お経を読む際に讃えるよう指示したのだ。
この意味を、宗教学者の島田裕巳氏が解説する。(以下、「」内は島田氏)
「3人の歴代会長が『永遠の師匠』であることを毎日確認しなさいという昨年の改訂は、創価学会が池田氏らを仏教の開祖である釈迦と同じような“崇拝対象”と位置付けたことを意味します。創価学会は日蓮正宗の信徒組織として発足した教団。日蓮の教えの『解釈』を学会員に示す役割だった池田氏が崇拝される側に回る意味は大きく、『池田教』の色が濃くなったことを意味します」
今年の会則改訂は、2つの点からそれ以上の重みを持つという。1つ目は、創価学会を「仏の存在」と定めたことだ。
「そもそも仏とは、釈迦のように真理を悟った者のことです。『創価学会仏』という概念は宗教団体自体が仏になるということだと思われますが、人間でないものが悟りを得て仏になるということは、一般的な仏教の解釈では聞いたことがありません。
聖教新聞によれば、『創価学会仏』という単語は第二代会長の戸田城聖氏が用いたと説明していますが、これまで創価学会内で重要な用語として扱われた形跡もないため、理解が難しい」
2つ目のポイントが、池田氏の敬称を「会長」から「先生」に変更した点だ。
「昨年の変更で池田氏は『永遠の師匠』となりましたが、今回の改訂でその位置付けがさらに高まった印象です。今回の改訂は創価学会がこれまで進めてきた『ポスト池田体制』確立に向けた動きが加速していることを示している」