崔順実(チェスンシル)・容疑者が職権乱用の共犯などの疑いで逮捕された11月3日、元慰安婦たちとその支援団体である韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)がソウル市内で集会を開いた。集会では、昨年12月に日韓両政府が慰安婦問題の解決を合意したことに対して、「(朴槿恵大統領が)崔容疑者に操られて結んだ合意ではないか」と厳しい非難が浴びせられた。
今回のスキャンダルを機に、元慰安婦や挺対協が批判の矛先を向けている「日韓合意」は、慰安婦問題の「最終かつ不可逆的」な決着を決めたものだ。
この合意で、日本は元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」に10億円を拠出し(履行済み)、一方の韓国は、ソウルの日本大使館前に違法に設置されたままの慰安婦像を撤去するよう「努力する」ことなどを約束した。
合意にわざわざ「最終かつ不可逆的」という文言が盛り込まれたことからもわかるように、日本政府はこの問題を巡って韓国側に何度も裏切られてきた経緯がある。そして、今回の合意についても反故にしようとする勢力がいる。
なかでも最も大きな影響力を持つのが、“崔容疑者に操られた指導者の合意など認めない”と勢いづく挺対協である。1990年11月に韓国教会女性連合会や韓国女性団体連合会など16団体で結成された組織だ。韓国問題に詳しいジャーナリストの前川惠司氏が解説する。
「毎週水曜日に行なわれている在韓日本大使館前のデモや、各地での慰安婦像設置運動などを積極的に主導しているのが挺対協です。日韓合意は無効と主張し、慰安婦像の撤去どころか、設置運動をまだ進めているのです」
挺対協は日韓合意以降も、オーストラリアのシドニー韓人会館(2016年8月6日)や韓国の釜山市の日本総領事館前(2016年8月15日)に慰安婦像を設置し、ソウル市中心部の南山公園内には「慰安婦記憶の場」(2016年8月29日)を作り、ワシントンにも像の設置を計画している。
そうしたなかで、日韓合意に踏み切った張本人である朴大統領に大スキャンダルが噴出し、それを好機とみて、攻勢を強めているのだ。