年末年始の旅行や帰省にLCC(格安航空会社)の利用を考えている人は多いだろう──。2012年に「ピーチ・アビエーション」「ジェットスター・ジャパン」「バニラ・エア」の日系3社が相次いで参入したものの、ローコスト経営ゆえに“安かろう悪かろう”の烙印も押されてきたが、ここにきてようやく軌道に乗ってきた。
2015年度の業績をみると、関西国際空港を拠点とするピーチが本業の儲けを示す営業利益で3年連続黒字を達成したのに対し、これまで発着枠に余裕がない成田空港を拠点に万年赤字に苦しんできたジェットスターとバニラも初の単年黒字化を達成。3社揃って好業績に沸いている。
LCCの経営が好転している理由は何か。航空経営研究所の赤井奉久所長がいう。
「3社とも『運航品質』が向上してきたことが最大の要因でしょう。かつては機材故障による遅延やパイロット不足で欠航になる便も多かったので、どんなに運賃が安くても忙しいビジネスマンや高齢者には不人気でしたが、最近はそうしたトラブルも少なく安定感が出てきました。
そのため、旅行代金を節約したい若者だけでなく、ある程度お金と時間に余裕があって頻繁に旅行に出掛けるような高齢者の中にも、大手キャリアからLCCに乗り換えて旅行回数を増やそうという人が増えました。使い勝手の良さがリピーターの獲得に繋がっているのです」
もちろん、LCC人気の高まりは座席利用率も押し上げた。
繁忙期・閑散期を含めて年間の平均搭乗率は80%ないと採算ラインに乗らないと言われており、一時は50%台と低迷するLCCもあった。それがいまや3社の搭乗率は、ピーチ=87%、ジェットスター=83%、バニラ=85%と、いずれも高水準をキープしている。
だが、LCC各社の本当の戦いはこれから始まるといっても過言ではない。そのカギを握っているのが、訪日外国人客も数多く見込める国際線だ。国内では既存路線以外で多くの需要が見込める「行き先」が限られているため、LCCの小型・中型機でも飛行可能な近距離の海外路線に活路を見出そうというのである。