韓国では朴槿恵大統領の退陣を求める20万人規模のデモが発生し、支持率は歴代最低の5%にまで低下した。人々が怒っているのは、単に友人である崔順実(チェスンシル)が国政に介入したからではない。権力者と近しいだけで、傍若無人な振る舞いが許されていたことに怒っている。韓国人が最も嫌うのが今回のような大きな権力を持つ政治家や大財閥のコネ絡みのスキャンダルなのだ。
このような怒りの背景には、韓国国民が抱える財閥への「恨」がある。韓国問題に詳しいジャーナリストの前川惠司氏の解説。
「韓国の企業格差は日本とは比べものにならず、中小企業は財閥系大企業の賃金の6割しかもらえない。中小企業が1つの大企業としか取引しない『垂直型分業』なので、大企業はコスト削減で中小を叩く。日本と違って中途で大企業に転職することは皆無に近く、財閥系と中小企業の従業員の格差はどんどん広がっていきます」
韓国在住の在日三世ライター・徐台教(ソテギョ)氏は、韓国の格差社会が大きく広がったのは李明博(イミョンバク)政権がきっかけだったと指摘する。
「李明博が大企業寄りの規制緩和を行ない、2003年から2013年の間に10大財閥の売上高が韓国のGDPに占める割合が50%から84%まで増加した」
財閥とそれ以外の格差は広がる一方なのに、“勝ち組”になれる人間はどんどん減っている。財閥企業の象徴ともいうべきサムスン電子の入社試験の倍率は数百倍。大卒で従業員300人以上の大企業の正社員になれるのは10人に1人だ。拓殖大学教授で韓国出身の評論家である呉善花氏が韓国の「現実」を指摘する。
「韓国は日本をしのぐ超学歴社会だが、大学を出ても就職は難しく運よく就職できても40代で肩叩きされる。その後の人生で一旗揚げようとしてもたいていは失敗し、失意に陥る。そのため、中高年の自殺が多く、OECDの統計ではトップです。様々なアンケートで『生まれ変わっても韓国人にはなりたくない』と答える人が非常に多く、年間2万人を超える韓国人が他国に移住しています」
「持たざる者」の生活は厳しく、「生活費を稼ぐため、マンションの一室で隠れて売春する若い女性も増えている」(韓国在住ジャーナリストの藤原修平氏)という。