資生堂の大人女性向けブランド「INTEGRATE」のCMで「25歳からは女の子じゃない」「もうチヤホヤされない」といった女子トークのシーンが一部の人々から「女性差別」などと批判され、放送中止となった。
同様のケースはここ数年間で何度もある。最近では、水着姿の少女が「養って……」と切ない表情で訴える鹿児島県志布志市のふるさと納税PR動画に批判が殺到。動画は、ふるさと納税の特典である鰻を擬人化したものだったが、ネットで「児童ポルノを連想させる」「女性蔑視」と大炎上し配信停止に追い込まれた。他にも、萌え系巨乳アニメキャラをPRに使った自治体のポスターが「無駄に性欲を喚起する」などとして、掲出中止に追い込まれた例もある。
資生堂の件はさておき、他はクレームが寄せられるニオイはするだけに、担当者はもう少し炎上リスクを察知すべきだったかもしれない。だが、こうした状況の中、広告制作の現場は萎縮している。広告代理店の営業担当者が語る。
「不妊治療に関連した商品の競合プレゼンをしたところ、クライアントから『不妊に悩む女性は描かないで。子供を産みたくても産めない人を傷つけるかもしれないから』という条件が付けられ表現に難儀しました」
確かに難題である。広告は本来ユーザーに「伝える」ための表現を考えるものだったはずだが、今は「クレームをつけられない」ことが最重要課題になっている。広告代理店では、法的制約への抵触を判断する法務部署だけでなく、リスク対応の専門部署にも確認をするよう求められているそうだ。