広島が25年ぶりにリーグ優勝を果たした今シーズン。かつてチームの低迷期を支えた4番打者・栗原健太(34)が、人知れずバットを置いた。
「広島が優勝したことは素直に嬉しかったけど、“なんで俺がそこにいないの?”って寂しさはありました。そういう星の下に生まれたのかな(笑い)」
2000年代の広島で右の大砲として君臨し、2008年にはキャリアハイの103打点を記録。今年、16年間過ごした広島を自由契約となり、楽天にテスト入団したが、一軍出場は叶わないまま現役引退を決めた。
「来季は楽天の二軍の打撃コーチとして、僕が教わってきたことを若手に伝えます。広島時代の2008年、それまで4番を務めた新井(貴浩)さんが阪神に移籍し、その抜けた穴を埋めるために練習に明け暮れました。4番として2年連続フル出場しましたが、おかげで右肘がボロボロに。当時、左手の人差し指も骨折していたけど出続けた(笑い)」
この頃に何試合か休んでいれば、現役生活は延びたかもしれない。だが当時、その選択肢はなかった。
「僕は、若手に試合に出続けることの大事さをこれからも説いていきます。若い頃に前田(智徳)さんに“レギュラー選手は試合に出続けることが重要だ”と教えられたのです。一般企業でも重役は会社を休まないでしょ? 4番はいつもそこにいなければいけない。チームのためお客さんのため、そしてプロとして自分の体よりも試合に出ることを優先すべき、ということを僕は実践してきました」
その教えの成果か、広島の歴史に「栗原」の名前は刻み込まれている。広島市民球場での最後のホームラン打者であり、マツダスタジアムの最初のホームラン打者でもある。忘れられない1球を選ぶとしたら、前者だという。