高齢ドライバーによる事故が増えている。運転免許の自主返納を促すなど、様々な取り組みが進んでいるが、果たして年齢による杓子定規な制度を定めるだけで事故防止に繋がるのか。高齢者の行動体系を研究する高知大学医学部精神科の上村直人・講師はこう指摘する。
「認知症も原因によって、自分のいる場所がわからなくなる症状が出るものとそうでないものによって違いがあり、進行度によっても差が大きい。それを一括りにして運転能力の判断基準に当てはめるのは、有効とはいえません」
自動車評論家の国沢光宏氏も検査によるスクリーニングの有効性に疑問を呈す。それにより、「認知症でなければ運転しても大丈夫」という理解になりかねず、むしろ危険な状況を生むリスクがあるからだ。同氏は高齢者の事故は2つに大別することができると話す。
「1つ目は認知症によるもの、2つ目は認知症ではないが年をとることで反射神経や視力などの認知機能が衰えている場合に起こるものです。1つ目の認知症のケースは、免許返納をしてもリスクは残ります。なぜなら認知症が重度に進んでいた場合、免許を返納しているということ事態を忘れてしまう可能性があるからです」
この問題には、解決法があると国沢氏は語る。
「車の鍵を解除するのに暗証番号を入力しなければ開かない仕組みにすれば良いのです。現在出回っている車にはこの仕組みが施されていませんが、技術開発にお金がかかるようなものではない。国交省や警察庁が真剣に取り組めば、事態は改善するはずだ」