現在は主として、腹部の小さな孔からアプローチする腹腔鏡下噴門形成術が行なわれている。より低侵襲な治療として井上センター長が開発したのが、経口内視鏡(胃カメラ)を使った噴門粘膜切除術(ARMS)だ。
「経口内視鏡で患部周辺の食道をグルリと1周近く切開し、余剰な粘膜部分を切除します。粘膜切除後の噴門部の形成は、自然の治癒過程により起こります。異物(治療器具)を入れたりはしないので、体にやさしい治療といえます。形成した噴門部の高度な狭窄により、難渋した方はいません」(井上センター長)
現在までの治療数は66例で、治療後10年経過している症例もあり、好成績を収めている。体に傷をつけずに治療が受けられるのも、患者の負担を減らしている要因だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年12月2日号