放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、ファッション業界と芸能界の最新事情を解説。
* * *
「ファッションショーのお仕事は、やったほうがいいんじゃない?」とは、かつて小泉今日子が20代前半の観月ありさにしたといわれるアドバイスである。
歌手としても女優としても順調にステップアップしていた観月にとってモデルの仕事は、当時の尺度としては逆行したと思われかねなかった。所属事務所とて、モデルの肩書なんて要らないから女優へ…と戦略をたてていたのではないか。
が、小泉今日子は当時から私服のセンスが良いことや、ファッション界からのオファーがあることのかっこよさをちゃんとわかっており、「やったほうがいい」と、その大切さを観月に説いたというワケだ。なんという先見の明だろう。
これまで、女優の肩書を欲しがったモデルはとても多かった。特に赤文字系雑誌のカバーモデルの多くはドラマに主演することを「アガリ」だと信じて疑わなかったふしがある。『JJ』出身の賀来千香子はその“元祖”であり、賀来より一世代下の『CanCam』の藤原紀香や長谷川京子、『ViVi』の松嶋菜々子らも続いた。
パリコレに出られるような本物のファッションモデルは別として、日本の雑誌専門モデルは、女優のほうが絶対格上だとされていたからだ。
しかし、ここにきて、状況が変わってきた。特にこの数年、海外のハイブランドが若い女優やタレントを次々“指名”してきているのだ。
いちばんに思い出されるのは、11年、GUCCIが武井咲とパトロネージ契約したこと。これは同社が日本に上陸して以来初のことだった。
GUCCIは、80年代、日本における第一次ブランドブームに流行っていた印象が強いが、武井と契約を結んだことで、若年層に強くアピールしたものだ。